日々の恐怖 8月6日 遺品整理(1)
友人の話です。
「 亡くなった父の遺品の整理が、全然進まなかったの。」
ある時彼女が私に言った。
彼女の父親が亡くなったのは五、六年も前だったので、片付ける気があるのなら確かに進捗は遅い。
いつも、片付けようとはするのだという。
気持ちだけではなく、家族で予定を合わせ計画を立て、業者に依頼したこともあった。
それなのに、その度に邪魔が入り、作業が遅々として進まない。
「 邪魔って、どんな?」
「 色々だけど。
家族がそろってインフルエンザとか、母が足を怪我したとか。
アルバムを眺めて一日が終わったり、大きな荷物を処分するはずが台風が来たり。
思い切って遺品整理の業者を頼んだら、予定日の一週間前に倒産だなんて、そんなことある?」
「 普通はないかも。」
鼻息荒い友人に、私はそう応えた。
「 実はね、理由があったみたい。」
「 理由? 作業が進まないことの?」
「 そう。」
友人によればつい先日も、父親の遺品整理の作業に母親と共に取り掛かったという。
その時は、今までの遅々とした作業が嘘のように、何もかもが順調に進んだ。
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