日々の恐怖 10月12日 タヌキ(4)
みんな何が何だか判らない。
「 あのね、神棚にね、タヌキがいるのよ。
何か狸の絵が置いてあると思うんだけどね。
それに憑いちゃったみたい。
元々悪いものではなくてね、自然のままって感じなの。
初めは悪戯半分だったんだろうけどね。
神棚に上げられちゃって、毎日拝まれてる内に混乱して、良い方に勘違いしちゃったみたい。」
親父は特に信心深くは無いが、習慣で毎朝神棚と仏壇を拝んでいる。
他の連中はたまにだけどね。
「 必死に頑張って、神様と同じようになろうとしてるのよ。
多少の力はあるけどね、タヌキだから些細な事しか出来ないのよ。
でも、立派なもんよ。
百年も続けば相当な力を持てるわ。
行く行くは神様にもなれるかもしれない。
だからね、途中で挫折しないように、ちょっとだけ扱いを良くしてあげて、その気にさせたいの。
誰か絵を知ってる?」
姉貴が、
「 アッ!」
と叫んで、踏み台を持ち出して神棚をゴソゴソ始めた。
神棚の社みたいになっている所の裏から、画用紙みたいな紙を引っ張り出してきた。
姉貴が小学一年生の時に書いたものらしい。
当時は絵が好きで、手当たり次第に書き散らかしていた。
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