日々の恐怖 8月30日 東京都板橋区(2)
ところが、その部屋で寝起きしている佐藤さんだけは、老婆の幽霊を見ない。
親父と鈴木さんが、
「 佐藤、変なもの見たことないか?」
というと、佐藤さんは、
“ きょとん・・・・??”
とするばかり。
それで、引っ越して1ヶ月して、親父と鈴木さんが黙っているのも悪いと思って、老婆の幽霊を佐藤さんに話した。
すると、佐藤さんは、
「 う~ん・・・・・・・・。」
と考えてから、みかん箱を部屋の中に置いて、上にワンカップを置いて、
「 先に住んでいるおばあさん、ごめんなさい。
でも、俺は貧乏だから、どこにも行き場がない。
だから、申し訳ないけど、大学を卒業するまでは、この部屋に住ませてもらえないでしょうか?
毎日お供え物をするのは無理だけど、田舎からお茶とお米だけは送ってくるので、それだけは供えます。
バイト代が入った時には、お花を一輪と、ワンカップをひとつ買ってきます。
どうか、よろしくお願いします。」
と言った。
親父と鈴木さんは、
“ なに、やってんだろうな、こいつ・・・・。”
と思ったが、佐藤さんが真面目にやっていたので、一緒にそのみかん箱に頭を下げた。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ