日々の恐怖 10月13日 私の話(6)
その後、法要準備ができるまで、
「 なんでそんな事につきあう必要があるのか・・・・?」
「 そんなんで良くなるなら医者なんていらないだろう。」
と副住職と一緒に言っていたが、どんなことでも仕事は仕事なので準備を終えて祈祷を行った。
で、お経を唱えていくうちに、御宝前に薄い靄の様な膜がかかっている事に気付いた。
“ あれは何だろう?
線香の煙にしては広がりすぎるし、臭いもしてこない・・・・・?”
と思っていたが、靄の中に僅かだけれども、半透明の着物を着た古い時代の女性が見えた。
“ うっそ~、さっきの話は本当なのかよ!”
と思いつつお経を唱えて祈祷を行うと、靄が晴れていつもの御宝前に戻った。
祈祷を終え、控室に下がってくるや副住職と一緒に、
「 見たか御宝前?」
「 おお見た!」
「 あれは何だったんだ?」
と言い合っていると、住職がまたやってきて、
「 犬は息を吹き返したそうだ。」
と言ってきた。
住職に、御宝前の女性を見たのか尋ねると、
「 そりゃ当然見えたさ。
大体本当に霊がとりついていないのなら、わざわざ祈祷なんてするわけないだろ。」
と、真面目な顔で返された。
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