日々の恐怖 10月30日 一軒家(12)
夏の終わり、兄が今度は車でやってきた。
車のトランクには、布袋にぎっしり詰まった水晶のさざれ。
「 うちがネパールで仕入れてる水晶さざれ。
安いけど、効果抜群なんだよ。」
と、親指大の水晶さざれを、家の東西南北四方に穴を掘って、水晶を10kgぐらいずつ埋めていく。
そして、家の中央に位置する居間の一角に、高さ80cmほどある巨大な水晶を設置した。
「 さっきのさざれは、そのまんま放っておいて。
この水晶は、君たちがここを引き払うときに回収していくけどね。」
ヒマラヤの水晶で重さは12kg。
うっすらと茶色のでかい水晶で、見るからに神々しい。
Bちゃんがすっかり魅入られて、兄に、
「 これ、買うとおいくらぐらいなんですか?」
と問うと、兄は、
「 卸価格で20万円かな。
小売で50万円はくだらないねえ。」
と言いました。
3年半して私達が引き払うまで、本当に怪現象は起きませんでした。
裏の雑木林にお供えを忘れると、台所の窓に、
” トントン!”
という催促はありましたが。
あと、2年時に、お香を絶やした時、天井裏に、
” ズルズル!”
と音がした時は、急いで兄に連絡したり、とか。
もうひとつ、居間の水晶の副作用で、寝るのが早くなったのには、ちょっと困ったかな。
特に宵っ張りだったCちゃんが、夜中23時くらいになるとコテンと寝てしまう。
その水晶は、家を明け渡す際、兄が持ち帰りましたが、BとCには2kgぐらいのヒマラヤ水晶を贈ってました。
卒業後、Cは兄に本気で惚れたようでアタックしていましたが、なんだかんだで振られたようです。
身内に、まさかの霊能者がいるとは思わなかったけど、兄の、
「 なんとなくだよ・・・・。」
と言った時の表情は、なんとも言えぬ不思議さでした。
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