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日々の恐怖 10月30日 一軒家(12)

2022-10-30 09:20:28 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月30日 一軒家(12)





 夏の終わり、兄が今度は車でやってきた。
車のトランクには、布袋にぎっしり詰まった水晶のさざれ。

「 うちがネパールで仕入れてる水晶さざれ。
安いけど、効果抜群なんだよ。」

と、親指大の水晶さざれを、家の東西南北四方に穴を掘って、水晶を10kgぐらいずつ埋めていく。
そして、家の中央に位置する居間の一角に、高さ80cmほどある巨大な水晶を設置した。

「 さっきのさざれは、そのまんま放っておいて。
この水晶は、君たちがここを引き払うときに回収していくけどね。」

 ヒマラヤの水晶で重さは12kg。
うっすらと茶色のでかい水晶で、見るからに神々しい。
Bちゃんがすっかり魅入られて、兄に、

「 これ、買うとおいくらぐらいなんですか?」

と問うと、兄は、

「 卸価格で20万円かな。
小売で50万円はくだらないねえ。」

と言いました。

 3年半して私達が引き払うまで、本当に怪現象は起きませんでした。
裏の雑木林にお供えを忘れると、台所の窓に、

” トントン!”

という催促はありましたが。
 あと、2年時に、お香を絶やした時、天井裏に、

” ズルズル!”

と音がした時は、急いで兄に連絡したり、とか。
 もうひとつ、居間の水晶の副作用で、寝るのが早くなったのには、ちょっと困ったかな。
特に宵っ張りだったCちゃんが、夜中23時くらいになるとコテンと寝てしまう。
その水晶は、家を明け渡す際、兄が持ち帰りましたが、BとCには2kgぐらいのヒマラヤ水晶を贈ってました。
 卒業後、Cは兄に本気で惚れたようでアタックしていましたが、なんだかんだで振られたようです。
身内に、まさかの霊能者がいるとは思わなかったけど、兄の、

「 なんとなくだよ・・・・。」

と言った時の表情は、なんとも言えぬ不思議さでした。










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