日々の恐怖 10月24日 一軒家(11)
兄は続けて、
「 最大の問題だけど、これは君たちが、大家と話し合わなくちゃいけない。」
と言った。
兄いわく、この隠居家屋には、仏壇があった。
隠居の婆さんがちゃんと供養していたんだけど、その婆さんが死んで、仏壇を引き上げた時に、きちんとした手順を踏んでいない。
だから、仏壇で拝んでもらってたご先祖の何人かが、今でもこっちに帰ってきてしまっている、と言うことだった。
「 家に来た男子を覗きこんだ老婆、玄関でCが視た兵隊がその先祖。
兵隊は婆さんの弟じゃないかな。
とにかく大家に話してくれ。
大家との話し合いが終わったら、また来るよ。」
その後、兄はBとC相手に酒盛りしたあと、一晩泊まって帰っていった。(私は下戸)
後日、私とBCの三人で大家のところへ行き、仏壇の件を説明したら、奥さんが、
「 ああ!」
と叫んだ。
あの家は、お婆さんの死後、何人かに貸したが、みんな3ヶ月もしないうちに引き払う。
で、住んでいた人が出て行く時、必ず、兵隊姿の霊を視たと言っていた。
急いで菩提寺に電話をして調べて貰うと、たしかに南方戦線で戦死した婆さんの弟がいる。
仏壇も、家族で移動させて、魂抜きもしていなかったと、すべてが兄の言う通りだった。
旦那さんは渋っていたが、奥さんが、
「 すぐに供養をして貰います、教えてくださってありがとう。」
と言った。(あとで不動産屋に聞いたが、旦那さんは婿養子で、長女の奥さんが継いでいるとのこと)
後に、夏のお盆に、いつもより盛大なご供養を菩提寺でやったとの連絡が大家からきた。
すると、今まで起きていた怪現象も悪夢もぴったり止まった。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ