日々の恐怖 10月27日 曰く付き物件の日常(8)
(10)入居して2年半と3ヶ月と少し
帰った時に、ガムテープでビッチリ貼った家内安全の札が、外れかけていた。
視線を感じるようになり、ハッキリと自宅の雰囲気が暗いと分かるようになった、夏なのに。
エアコンも調子が悪い。
ガタガタ言う。
明日になったらお参りに行こうとベッドに倒れ込んだ。
しばらくして薄目を開けると、枕元で満面の笑みの人影が見えた気がして飛び起きる。
慌てて神社に行き、新しいお守りを買って財布に入れる。
帰りに財布を落としたのに気付く。
財布紐(代わりの財布のストラップ)が切れていた。
以降、退去するまでの3ヶ月間、高熱が続いた。
餡子入りの食品を中毒のように買い占めて食べる。
新しいお守りも、家内安全の札も、もう効果は無いようだった。
病院でも原因不明で薬も効かず、熱が下がらず、気分が滅入り、何故か死にたいと思う日々が続く。
吐き気も酷く、急激に痩せた。
風呂や収納のドアは、
” キィッ・・・・・。”
と触れてもいないのに少し開く。
窓を開けると近所の犬が吠え出す。
置いた食器が並行にズレて、何かに押されるように落ちる瞬間も、ついに目撃した。
食料だけ何とか買って帰るとすぐポストがパタンと閉まる音がするが、覗いてみても真っ暗だ。
今さっき明かりを付けたはずの廊下は、もう真っ暗だった。
誰かが覗いている気がした。
視界の端に人影がチラつき、家内安全どころか家内不安だった。
そして、とにかく急いで退去することを決めた。
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