日々の恐怖 6月10日 おっかねえ神様(1)
大学生一年生の頃だ。
夏休みに帰省すると、道で見知らぬ若い夫婦と会った。
田舎生まれの人ならわかるだろうが、人の少ない集落では誰もが顔見知りである。
だから余所から来た人はすぐにわかる。
特に若い人は珍しいから、なおさらである。
私もその例に漏れず、見知らぬ夫婦が余所から来た人なのはすぐにわかった。
旅行客が来るような場所ではないし、迷子らしくもない。
「 まさか移住者か・・・・?」
と一緒にいた妹に聞くと、
「 そうだ。」
という。
「 先月から住みだした人だよ。」
「 へえ・・、こんなクソ田舎に移住とは、酔狂な人だな。」
「 移住っていうか、奥さんのほうの実家があるんだって。」
聞けばその奥さん、私もよく知る爺さんの孫にあたる人らしい。
その爺さんはもう何年も前に亡くなっていたのだが、家だけはずっと残っていた。
夫婦は、そこに引っ越してきたという。
奥さん自身はこちらの出身ではないが、子供のころから何度も訪れていて、田舎暮らしに憧れていたのだそうな。
その時は、
「 へえ・・・・・。」
と思っただけだった。
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