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日々の恐怖 6月8日 お守り(5)

2022-06-08 22:26:55 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 6月8日 お守り(5)





 実家に帰ってきて2日後、勤め先の病院で母が倒れました。
左足の膝から下が2倍以上に膨れ上がり、歩くことはおろか、立ち上がることすら出来なくなってしまったのです。
病名は蜂巣炎です。
それも早期発見したのにもかかわらずの劇症で、即日入院してしまいました。
 入院して次の日、父と私は主治医に呼び出されました。

「 K(母)さんのことですが、あまり芳しくありません。
原因がわからないんです。」
「 え・・、あの、病原菌とか、検査結果は・・・・?」
「 出てきた膿をシャーレで培養してみましたけど、死滅したものばかりでした。
ちなみに、Kさんは最近転んだり傷をつくったりしませんでしたか?」

そう言われて、

” そういえば、引越しの手伝いに来たときに玄関でスッ転んでたっけ・・・。”

と思い至りました。
 きっとそれだと思って主治医に言うと、

「 恐らくそのときできた傷口から病原体が入り込んだのでしょう。
病原体は不明ですが。」

とのことでした。
 それから入院の日程が未定なことや、これからの治療法などを話し、最後に、先生は大変言いづらそうな顔で言いました。

「 このまま劇症が続くようなら、左足を切断します。」

めったに泣かない父が泣きました。
 その横で私は、あの女性の神様が祭られているお社で母が引いた、あのお御籤を思い出していました。

”大病は治る”

そう書いてあるのを思い出したんです。
 妙な確信の元に父を慰めた私は、主治医にその切断の話は母にするのかと聞きました。
すると主治医は苦笑いをしながら、

「 したんですけど・・・・。」

と、なにやら歯切れの悪い言い回しをしました。

「 現実味のない話ですからアレなんでしょうけど、Kさん、

『 あ、そうなんですか。
まあでも、たぶん大丈夫です。』

なんて言うんですよ。」

私は、

” あ・・、これは、母も治るという妙な確信をもってるな・・・。”

と思いました。










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