日々の恐怖 4月10日 中古の家(1)
高1の頃に父がちょっと出世して、一軒家を買おうかということになった。
それで日曜を利用して不動産巡りみたいなことをしていた。
その中で見た中古の家があった。
両親と俺と弟(当時5歳)で行った。
所有者はたしか40歳くらいのご夫婦で、夕方に現場で待ち合わせた。
そのときに住んでいたのは、ざわついた繁華街の賃貸マンションだったので、郊外のその一軒家は、外から一見するととても魅力的だった。
家の中に入れてもらったら、やけに光が弱くて雰囲気が悪い気がした。
それでもご夫婦は、
「 日中はけっこう光入りますよ。」
みたいなことを。
1部屋ずつ見てたら、いきなり弟が、
「 ビヤアアアア!!!!!」
って泣き出した。
「 あそこに怖い顔した男の人がいて、こっち見てる。」
って。
廊下の隅っこを指さし、母にびったりくっついて、ヒックヒックと嗚咽が止まらなくなってしまった。
父がとっさに、
「 すいません、この子ちょっと変わった子で。
外で一度こうなると家に帰るまで収拾つかないんですよ。
申し訳ないんですけど、また後日お願いしてもいいですか?」
みたいなことを言い、すぐ帰ることになった。
父は深々と頭を下げて、家族で車に乗り込んだ。
弟は泣きやんだ。
堅い表情をした父は、
「 ちょっとコンビニ見つけたら入るからな。」
と。
そしてすぐ見つけたコンビニへ入り、塩(食卓塩)を買ってきた。
そして、
「 みんな外出ろ。」
と俺らを車の外へ出し、いきなりふりかけ始めた。
「 お清めだからちょっとだけ我慢しろ。」
と言い、車にもぱらぱらと。
鈍感な俺はそれでようやく、
” あ、あの家に変なのがいたのか!”
と悟り、父に聞いてみた。
母はまだ弟をぎゅっと抱きしめていた。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ