日々の恐怖 4月5日 村岡君(4)
大学を関西で過ごした私はそのまま関西で就職し、月日が経ちました。
まだ交友が続いている村岡君が所要で関西に出てくることになり、大阪の梅田で久しぶりの再開を果たしました。
まあ、メールや電話でのやり取りは結構あるので、まあまあの感激でしたが。
私は二人で飲みがてら、あの時何が起こったのか長年気になっていることを聞いてみました。
あの時、竹林で何かを探していた女は、雷光と共にすべる様に教室の方角に向き直り、そのまま、
” すう~っ。”
と、こちらに移動してきたそうです。
古い着物姿に何かを入れた袋、うつろな瞳、着物のカスリ模様まではっきりと見えたそうです。
そしてそのまま廊下の壁と窓をすり抜け、教室の窓もすり抜け、そのまま空中で雪が解けるように消えたそうです。
「 お前、ホンマに見えたんか?」
私の問いに酒を飲みながら何度も村岡君はうなづきました。
「 確かにな、見たわ。
でも、もうええわ。」
その後は二人ともおいしい料理と酒を十分堪能しました。
JR大阪駅に村岡君を送って行く途中で村岡君がつぶやきました。
「 なあ、あの時の女性な、こんな風に空中移動してたわ、ゆっくりとなぁ・・・。」
その視線の先には、阪急梅田の動く歩道がありました。
「 歩かずに乗ってる人は、まさにあの時の女性の移動スガタそのままや。」
大阪駅のいつも私が行かない長距離用のホームで、村岡君は笑いながら私の肩をグウで軽く殴りながら何回も言いました。
「 また、帰って来いよ~~、智頭急乗ってなっ!待っとるよ!!」
あの怖かった経験も、今ではふるさとの甘い思い出なのかもしれません。
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