日々の恐怖 9月12日 霧が出る(2)
霧については、もう一つ話がある。
これも7年くらい前の話だ。
母と祖母が車で一緒に出掛けていて、他の家族も家を空けていたので一人でテレビ見ていた。
「 夜九時くらいには帰る。」
と言っていた母達が戻らないまま日付が変わったので、
“ 世間話盛り上がって、帰るに帰れない状態になってるのかな・・・。”
と思っていたら、電話がかかってきた。
「 もしもし?」
『 お母さんだよ。
なんかね、帰ろうとしてるんだけど、どの道進んでも同じとこに出ちゃって帰れないんだけど・・・・。』
「 何それ、道に迷ったの?」
『 霧出てるけど、知ってる道だから迷うわけないんだけどなぁ・・・・。
どの道行っても、真ん中に床屋が見える分かれ道に着くんだよ。
さっきから右に真っ直ぐ行ったら床屋、左に真っ直ぐ行ったら床屋の繰り返しでね。
あ、また床屋だ、アハハ・・・。』
「 狐詣でやってないで早く帰る。
その床屋、もしかして営業中?」
『 うん、電気点いてるし、くるくる(看板)まわってるよ。』
「 この時間に営業してるわけないじゃん。
完全に変なのに誘われてるだろ、それ。
Uターンして戻りなよ。」
めんどくさいと言いながら、一度電話を切ってUターンした母、数分後、再び着信があった。
『 なんか霧晴れたよ~。
同じ道来たのに、さっきの床屋どこにもない。』
「 じゃあ、見たことある場所に来たら、またUターンして帰って来なよ。」
『 わかった~。
よく寄るコンビニ見えたから、そこでUターンするよ。』
「 アイス!アイス!」
『 30分くらいで帰るね~。』
“ ブツッ!”
「 ア、アイス・・・・・。」
アイスのお土産は、ありませんでした。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ