日々の恐怖 10月18日 友達
中3の時まですごく仲の良かった友達がいた。
だが思春期特有のもつれでうまく話せなくなってしまい、こちらから話しかけても絶対口を開いてくれなくなってしまった。
そのまま別々の高校に進学したが、中学が同じ学区なだけあって、1年に数回は相手が自転車、こちらが歩きの時にすれ違ったりした。
しかしお互い目が合い相手が誰かわかるもののどちらが引き止める訳でもなく、そのまま時は過ぎていった。
高校を卒業すると地元の友達とばったり会う機会も少なくなったが、時々その友達の事はふとした時に思い出すことがあり、その頃になってようやく友達が口を開いてくれなくなった理由を推測することができた。
推測が正解だとするもどちらが悪いという事ではないはずだが、なんとなく申し訳ない気持ちになった。
高校時代に思い当たっていればすれ違った時引き止めていたのにな、と心残りだった。
友達は今どうしているだろうか。
思い出に浸る時には必ず思い出していたが、それも年にあるかないかという頻度で、年を重ねるにつれて少なくなっていった。
そんな事も忘れていたある時夢を見た。
全く関係のない夢だったはずなのに、フッと自分の隣に例の友達が現れた。
咄嗟にその友達に向かって、
「 ごめんね!」
という言葉が口を突いて出た。
友達は首を左右に振って、仲が良かった頃のとびきりの笑顔をくれた。
そこで急に目が覚めた。
目を開けると当たり前だが友達の姿はなく、見えるのはタンスの木目だった。
寝返りを打つうっすらと空が明るくなってきていて明け方なのがわかった。
こんなにスッキリ目が覚める事は珍しかったし、その日は休みだったので寝室から出て居間で過ごすことにした。
そこで何気なくつけていたテレビが昼前のニュース番組になった。
ローカルチャンネルだったから、地元のある地域で事故があったという内容だった。
結構ひどい事故そうだったため画面に目を向けた。
画面が切り替わり事故現場の映像が流れる。
その画面にテロップが出て見覚えのある名前が表示された。
アナウンサーがその名前を読み上げる。
珍しい名前だから、この辺りでその名前だと友達のことで間違いはなかった。
友達は即死だったらしいから、明け方の目を覚ました時間と事故の時間はだいたい一致している。
優しいやつだから最後に会いに来てくれたのだろうか。
偶然にしては出来過ぎている気がして、似たような話を読んだり聞いたりすると思い出す出来事だ。
本当にいいやつだった。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ