日々の恐怖 4月12日 白狐(5)
お祖母さんの話を、麦茶を添えてあーちゃんと二人で聞くこととなった。
あーちゃんのお祖母さんの麦茶は、砂糖が入ってるから余り好きじゃなかった。
麦茶に手を付けず、とくちゃんに聞いた話をする。
この謂れは本当かと。
「 そんな話は聞いたことないねぇ。」
お祖母さんはあっさり否定する。
「 でも犬に殺されたってのは聞いてるよ。
その狐を鎮めるために、神田神社は建てられたのね。
節句の祭りで神楽をやってるでしょう。
あの時に付けるお面は狐面だからね。
お狐様を奉って、この辺りを守ってくださいってお願いしてるんだよ。」
すごい信憑性があった。
寂れた小さな神社だけれど、とある節句の時はわりと大掛かりなお祭りをしていた。
初詣よりも縁日よりも、節句のお祭りは派手。
神輿も出て神楽も催される。
それでも御神体は、本殿の奥は公開されなかった。
屋上から本殿の中を見たことを話した上で、
「 あの石像がまた見たいんです。」
と頼んでみると、
「 それは無理だねぇ。」
と一蹴された。
「 本家の人間なら立ち入られるから、うちの養子になりなさいな。」
帰宅後、母親にあーちゃん家の養子になると言ってみたけど、
「 馬鹿言ってないで宿題しなさい。」
の一言で話は終わった。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ