日々の恐怖 2月4日 昔の友達(3)
自分にも子供がいるように彼にも息子がいて、それが子供時代の彼に瓜二つでも、おかしくはなかった。
少年は突然のことに目を見開いていた。
やっぱり止した方が良かったか、と知人が後悔して謝ろうとした時、
「 おにいちゃ~ん・・・。」
彼の妹らしき美少女が駆け寄ってきて、知人は言葉を失った。
目の前に並び立つのは、幼い頃の知人の思い出そのままだった。
瓜二つのというレベルではない。
二人の前に立つ大人姿の自分の方が、場違いに感じるほどだったという。
「 〇〇って言う名前じゃないですけど・・・・・。」
少年はそう言って、右眉をピクリとはね上げ、小さく笑った。
「 向こうでお父さんたち待ってるから、行こう。」
そう言って、少女が兄の袖を引いた。
そして、ちらりと知人の方を見たが、その目は兄とは対照的に、冷たい程なんの感情も浮かんではいなかった。
去っていく子供達を見つめながら、二人の行く先にはあの美しい両親が待っているのかと、知人はぼんやりそう思ったという。
「 失礼ですが、それはもしかしてあなたの勘違いでは?」
私の無礼な質問に、話し終わった知人は,
「 う~ん・・・・・・・。」
と首をひねった。
「 確かに・・・・・。
僕自身もね、半信半疑なんですよ。
常識的に考えて、あの子達だけ時が止まることなんて、あり得ませんから。
ただ・・・・。」
「 ただ・・・?」
「 あの男の子が、去り際にボソッと僕に言った気がしたんですよ。
いや、空耳じゃないですよ、多分・・・。
もう、後ろ姿だったんですけどね。
” 手紙、ごめんな。”
って。
僕が出していた手紙に返事を書けなかったことだとしたら、辻褄があうんですよね・・・。」
知人は、訝しげにそう言った。
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