日々の恐怖 6月26日 寂れた旅館(1)
低圧の電気設備の点検で、山の中にある寂れた旅館に行った。
その旅館に着いたのが16時ちょい過ぎで、時間的にも最後のお客さんで、終わったら引き上げようと思っていた。
そのときの季節は夏だったんだけど、山の中ってこともあって、あたりは薄暗かった。
訪ねると女将らしき人が出てきてくれたので、業務内容を説明して了解を得て点検を始めた。
その旅館は結構広くて、女将に配電盤の場所を訊ねたんだけど、女将は設備に疎いらしく分からないという答えが返ってきた。
当然、私も広すぎて分からないので、まず外に付いてる電気メーターのところで漏電を測定する事にした。
電気メーターを探して外を歩いてたら、旅館は二つに別れてるのが分かった。
所謂、別館ってやつだ。
電気メーターを見つけるのも一苦労で、やっとのことでメーターを見つけた。
メーターは別館の壁に付いていた。
壁に付いてると言っても、ぱっと見は分からなくて、扉を開けると見える感じ。
その扉を開けた時、サーッと冷たい風が吹いた。
なんとなく、
” イヤだなぁ・・・・。”
と思って、さっさと漏電の測定だけして戻ろうと考えていた。
漏電の測定をやってみたら電灯回路は異常なかったけど、動力回路は漏電しているみたいだった。
扉を閉めて本館の方に戻ろうと別館を背にしたとき、視線と言っていいのだろうかなんか見られてる感じがして振り返った。
でも、振り返った先には特に何かがいるわけではなかった。
ただ別館をよく見てみると、ガラスが割れたり壁が剥がれているのを確認できた。
正直使用している感じではなかった。
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