健康保険制度問題で苦境に立っているオバマ政権だが、外交問題でもその影響力の低下が甚だしい。サウジアラビアは公然とオバマの中東政策(無策)を非難しているし、特に最近ではイランへの急速な融和策がサウジの神経を逆なでしている。そのはけ口として、サウジは既に安保理非常任理事国就任辞退というあからさまな形で現れている。
この不穏な動きを受けてケリー国務長官が11日間にわたる中東行脚を開始したが、サウジはじめ反アサドを支援している中東諸国では、もはやオバマ在任中はシリア問題で米国の指導性は期待できないという認識が一般化しつつある。
あれほど「アサドの化学兵器使用はレッドラインを越えた、軍事介入実施」と言っておきながら直前になって議会承認と言う形で敵前逃亡したオバマへの不信感はもはや拭い去れないものだろう。約束したことを履行しなければ、信頼関係は継続しない。もっとも米国とサウジの関係は80年前の建国時にまで遡るし、エネルギー、テロ対策、軍事協力、貿易及び投資という面での協調は依然重要だ。たとえば仮にサウジや中東諸国が資金援助しても、それを有効な軍事力とするためには米国の支援が不可欠だからだ。したがって、米国とサウジの関係が決定的な破たんをきたすことはあり得ない。今回のケリー長官の歴訪は多分にサウジほかの不満を吸い上げることにあるのだろう。ただ、もともと腰の据わっていないケリーのことだから、サウジとしても何らかの打開策があるとは期待していないだろう。
自らの無策、優柔不断のツケをオバマが支払わなければならない日は遠くなさそうだ。