二月ほど前に購入した岩波新書「シルクロードの古代都市ーアムダリア遺跡の旅」は気の向いたときにページをめくるというのんびりした読み方をしてきたが、今日、読み終えることができた。アフガニスタンやその近隣諸国を流れるアムダリア川に沿って点在する古代遺跡を、素人でもついていけるようなわかりやすい文章によって、いまだに政治的に不安定のこの地にかつて繁栄した古代文明が活き活きと蘇ってきた。特に、この地域の文明にギリシャ文明が与えた死活的な影響については改めて自分の無知を知らされた感じだった。著者の加藤九祚氏は90歳を超えてなお矍鑠として現地調査に赴くという類希な考古学者。
この第二章の題名が「死ぬときは悔ゆることなかれーヘレニズムの都市遺跡アイハヌム」。キアネスの廟の台座に彫られていたのがデルフォイのアポロ神殿にあるこの箴言だった。この章の最後に引用されていたのは
「少年のときは礼儀正しく
青年のときは情熱を制御し
中年になれば義者であり
老年になればよき助言者であれ
死ぬときは悔ゆることなかれ」
である。自分はたぶん老年にさしかかっているのだろうが、思えば、少年のときからこの箴言のまさに正反対を生きてきたように思えてならない。そうだとすると、あと残されているのは、死ぬときは悔ゆることなかれ だけである。最後だけは、とも思うが、そうはいかないだろう。