1815年のワーテルローでの戦いに敗れたナポレオンが1821年、流刑地セントヘレナ島で死去の19日前にしたためた遺書を側近が複写したものがパリで競売にふされるという。予想落札価格は、複写にもかかわらず12万ユーロ(1600万円)となっている。ナポレオン直筆の遺書の原本はフランス国立公文書館に保管されている
。英軍に幽閉され、不本意な最期を遂げたナポレオンはこれと言った財産もなかったが、遺書では、宝石や金塊、衣装を誰が受け取るか指示があったほか、遺灰はセーヌ川に散骨することを求めていた。しかし、時のフランス王はこれを認めず、彼の遺灰がフランス本土に戻ったのは19年後、そしてパリの廃兵院に埋葬された。
ヨーロッパの地図を完全に塗り替えたナポレオンの遺書が、本人直筆ではないにしてもその当時に複写されたという事で特別な意味があるのだろう。たまたま今、気が向いたときにはビクトル・ユーゴ―のレ・ミゼラブル(岩波文庫版)を読み返しているのだが、あの悪党テナルディエもワーテルローの戦いに加わっていた。EUの混乱を見るにつけ、ナポレオンの時代から人間はどれだけ進歩したのだろうか、と考えずにはおられない。