先だっての「宅買い」の品の中に「日本航空燃料史・嘉納吉彦 1956刊」というのがあった。小生の興味をそそるもので、早速目を通した。 技術者の書いたほぼ専門的な本で数字数式やグラフ、化学物質の名前が詰め込まれていてちょっと手古摺ったけれども、内容は大変面白かった。
普段なにげなく使っているガソリンもタダ重油から抽出しただけではなく、今のガソリン機関がうまく回転し力が安定して出るように色々な添加剤が入っていることは漠然と知っていて、いわゆる「ハイオク」という種類があることは常識なのだが ではその添加物が何であるかまでは考えない。 地上で、水平移動に使用されることしか想定されていない自動車用の燃料でこのような「加工」がされるなら、航空機とあれば条件はもっと過酷。輸送機・旅客機なら少なくとも逆さまになる巴返り等は想定されなくとも、相手が戦闘機となるとまるで条件が違ってくるであろうことは(普段は考えないだろうが)想像できる。気温だけでも地上のー15~45度、高空ではマイナスの25~35度。回転数も戦闘状態では一気にアイドリングの7・8倍、しかも天地がひっくり返ってもきちんと作動しなければならない。
馬力を稼ぐために多気筒になり、星形になって燃料もだが潤滑油の配分にも大きな難題がある。
こういう記述がある「大豆油を加水分解して亜硫酸ガスと白土を触媒として290度だ融合し、モリブデン系触媒を用い、100㎏/cm3、300~、その子尾を350°Cの下に分解水素添加して高級炭化水素油とし、圧減蒸留して航空潤滑油を約30%の収率で得る方法を完成し、陸軍用として工業化した」
全篇こんな感じの本だが、この本でわかることは触媒や添加に使う材料のほとんどが外国に頼っていた、陸軍と海軍の仕様や要求の違いと無理強い、そして開戦後の原油の入手不足。
これらはすべて開戦以前にわかっていたことである。松根を掘ったり、石炭油化にはっぱをかけたり(ドイツではズット以前から研究を続けていた、しかし今日に至るまでまだ成功していない)すでにすべてが「遅い・資金不足」で残るは精神論。 勝てるはずはない。
戦後、紫電改や四式・疾風をUSに持っていって性能試験をしたら日本でよりズット高性能を発揮したことは知られている。それは燃料と滑油の性能が高く良かった結果であり、いかに日本の工業生産技術が貧弱であったかの証明の一コマである。
で いつもの様に では「ナゼ!戦争を止められなかった」のだろう、という話になります。
実は これは「過去」の話ではないのであって、今現在も事情は殆ど変わっておらず、果たして「国民」を守ってくれるかどうか大変疑わしいことを知っておかなければならない。大手のマスコミは決して書かない。
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