テーマ:認知心理学キーワード 「現代用語の基礎知識」心理学 海保博之
◆情動知(emotional insight)〔1991年版 心理学〕
野田正彰は、身体全体でしかも感情的な興奮のなかで自己や共同体の運命を直感的に悟る情動知の世界を、コンピュータが扱う情報の世界に対置させ、その間に、知恵、知識を置く知の階層モデルを提案している。そして、最近の知をめぐる状況を、アトム化し冷え切った情報知の世界(冷たい認知)の肥大ととらえ、情動知(暖かい認知)の復権を訴える。実体験欠乏症に、情動知の欠如がもたらす破局的な姿がかいま見える。
◆実体験欠乏症〔1991年版 心理学〕
情報伝達のメディアの目覚しい発展ぶりが、間接体験による学習の領域を異常なまでに拡大してしまい、自らの手足を使っての実体験による学習の領分が極端に縮小してしまった。杉原一昭は、「物理学の高度な知識を振り回す子供」「実物の牛の大きさの感覚のない子供」「みたて遊びのできない子供」などを紹介し、彼らにおけるモノと接続しないことばの世界の肥大が、実体験欠乏症の一つの特徴であるとしている。
一方、大平健は、軽い精神的不調を訴える患者に特徴的に見られる、一流のモノへの異常なまでのこだわり(モノについて語らせると、とめどないので「モノ語り」と呼ぶ)に注目している。子供の極端なことばへの傾斜と、青年のこれまた、極端なモノへの傾斜とは、実体験欠乏という盾の両面にある現象のように見える。
|記事URL|コメント(2)||ペタを残す|
2006-03-12 08:06:14