コラム「痩身法の効果を実験的に検証する」********
暖衣飽食状態の日本においては、老若男女、しかも年齢を問わず、やせたい(痩身)願望は強い。かくして、さまざまな痩身法が工夫さ、ビジネスとして喧伝されている。
それらを大別すると、食物によるもの、サプリメント(栄養補助剤)によるもの、身体トレーニングによるものになる。
それらの効果を実験的に検証するとすると、どうなるであろうか。
ごくオーソドックスな実験としては次のようになる。
1)被験者40名を確保して、20名ずつにランダムに分けて、一方を統制群、他方を実験群とする。この時点で、体重計測をしておく(事前テスト)。
2)実験群には、痩身用サプリメントであると告げて錠剤を飲んでもらう。統制群には、痩身用サプリメントと称して、実際には痩身には効果のない小麦粉の錠剤(偽薬)を飲んでもらう。錠剤の量、服用時間は一定。日常生活はいつも通り。
3)毎日、定時に体重を計測・記録してもらう。これを1か月間おこなう(事後テスト)。
4)両群の体重減少の変化を統計的に比較する。
多分、サプリメント効果が強力なら、これで、その効果は実証できるかもしれない。ただ、次のような点が問題となる。
1)実験目的を被験者に伝えることの効果は
実験の被験者に「選ばれた」との意識が、モラール(志気)を高めてしまい、実験者の検証しようとした独立変数の効果を凌いでしまうことを、ホーソン(Hawthorne)効果と呼ぶ。両群ともに体重減少がみられ、かつその間に差がないとすると、ホーソン効果が疑われる。だからといって、偽の実験目的を告げることが許されるかどうかは、なんとも言えない。
2)痩身に対する被験者の考え方と日常的な実践
実験群と統制群とは、ランダムに割り付けられているので、交絡変数の影響は均等に混入していると想定してさしつかえないが、最初の40名がどのような母集団からのサンプルであるかによって、そこのところも問題になることがある。たとえば、痩身クリニックに来院した一定体重範囲内の40名ならあまり問題ないが、ランダムに選ばれた家庭の主婦40名なら、痩身についての考え方、日常的な食習慣などのバラエティが大きい。群間の等質性の保証が危うくなる。事前チェックによって、変動幅を狭めておく必要がある。