はじめに
20世紀前半、行動主義全盛の頃は、その教育への影響は、周辺的なところに限定されていた。たとえば、条件づけの原理の原理を応用したスキナーのティーチング・マシーンとプログラム学習も、指導形態へのその影響の大きさには驚くべきものがあるが、教科の内容、さらには子どもの知性への効果となると、どうしても表層的なところにとどまらざるをえなかった。
20世紀後半になり、認知の科学が発展するにつれて、認知心理学は、急速にその形を整えだし、一方では、人口知能研究との連携、他方では、教育・学習研究との連携をとりながら、知の特性とその形成を解明する科学としての中心的な役割を果たすまでになってきた。
行動主義の教育への影響が周辺的で表層的であったのに対して、認知心理学のそれは、子ども一人ひとりの知性の深層にまで立ち入って、そこで何が起こってきるか、どうすればそこに教育的な介入ができるかを深く考察するようになった。
もっとも、そこには、大きな弱点もあった。行動主義の教育に与えた影響は周辺的で表層的ではあっても、一つひとつの影響は、きわめて頑健であった。誰もがそうすればそれなりの効果を期待できるものであった。それに対して、認知心理学の教育への影響は、しばしば、理論志向、実用性欠如という批判にさらされてきた。その批判は甘んじて受けなければならないが、しかし、教育や子どもをとらえる視点の多様さには大きく貢献してきたことは間違いない。
本稿では、こうした背景を踏まえて、認知心理学、認知の科学のキーワードを4つほど取り上げ、それぞれにまつわる教育上の課題を論じてみたい。
第1 表象
第2 認知方略
第3 メタ認知
第4 身体性
20世紀前半、行動主義全盛の頃は、その教育への影響は、周辺的なところに限定されていた。たとえば、条件づけの原理の原理を応用したスキナーのティーチング・マシーンとプログラム学習も、指導形態へのその影響の大きさには驚くべきものがあるが、教科の内容、さらには子どもの知性への効果となると、どうしても表層的なところにとどまらざるをえなかった。
20世紀後半になり、認知の科学が発展するにつれて、認知心理学は、急速にその形を整えだし、一方では、人口知能研究との連携、他方では、教育・学習研究との連携をとりながら、知の特性とその形成を解明する科学としての中心的な役割を果たすまでになってきた。
行動主義の教育への影響が周辺的で表層的であったのに対して、認知心理学のそれは、子ども一人ひとりの知性の深層にまで立ち入って、そこで何が起こってきるか、どうすればそこに教育的な介入ができるかを深く考察するようになった。
もっとも、そこには、大きな弱点もあった。行動主義の教育に与えた影響は周辺的で表層的ではあっても、一つひとつの影響は、きわめて頑健であった。誰もがそうすればそれなりの効果を期待できるものであった。それに対して、認知心理学の教育への影響は、しばしば、理論志向、実用性欠如という批判にさらされてきた。その批判は甘んじて受けなければならないが、しかし、教育や子どもをとらえる視点の多様さには大きく貢献してきたことは間違いない。
本稿では、こうした背景を踏まえて、認知心理学、認知の科学のキーワードを4つほど取り上げ、それぞれにまつわる教育上の課題を論じてみたい。
第1 表象
第2 認知方略
第3 メタ認知
第4 身体性