1.3 失敗を恐れない挑戦を
●野口英世はタイプA性格か
人の性格をいくつかのタイプに分ける試みが昔から行なわれてきている。タイプA性格もその一つで次のような性格である。
「競争心旺盛 敵意が強い 達成欲求が強い 集中力がある
時間に追われている 人の気持ちを忖度(そんたく)しない」
休むことなく次々と仕事をこなし、多少の失敗は気にもとめない人である。
ちなみに、この性格類型が知られるようになったのは、冠動脈性心臓疾患にかかりやすい人に共通にしてみられたところからであった。
日本のサラリーマンとしての成功モデルが、このタイプA型であるのが常々気になっている。
というのは、タイプA性格の人は、ちょっとしたきっかけで一転してうつ状態になる可能性もあるからである。うつは自殺につながる。日本の自殺者年間三万余人---すべてがうつ病によるものではないが---は、交通事故死1万人とともに、尋常な数字ではない。
閑話休題。推察するところ、野口英世もタイプA性格かもしれない。もっとも死因は心臓疾患でもないし、うつ病の気配もなかったので、当たっていないかもしれないが。
タイプA性格の人は、それほど数は多くはないが、確実に身の回りに一人や2人はいる。あまり自分の近くにいるとうっとおしいが、遠くからなら自分もそのようになれたらとうらやましくも感ずるような人である。
●人を気にするから失敗が怖い
野口英世に限らないが、タイプA性格の人の評価は、毀誉褒貶(きよほうへん)相半ばするのが常である。毀はそしること、誉褒はほめること、貶はけなすことである。
偉人とされる人の中には、仕事では誉褒、日常生活では毀貶ということが結構ある。野口英世もその一人である。借金魔であったらしい。
タイプA性格の強みは、失敗を恐れないことである。したがって、平気で新しいことに挑戦する。当然、失敗する可能性は高くなる。それでも目標に近づくことだけに心とからだを集中する。
まさに、「危ないところに登らねば熟柿は食えぬ」である。
野口英世は、アメリカ留学で最初に手がけたのが毒蛇の毒の研究だという。
能力が伴わないと、ただどたばたしているだけに終って最後は心臓疾患での死が待っているということになるが、能力があれば、普通の人の何倍の仕事量を達成する凄さがある。
●あなたのタイプA性格度は
タイプA性格の度合いをはかる簡単な自己チェック式のテストがある。クイズ1に示すようなものである。遊びのつもりで、あなたのタイプA性格度をチェックしてみてほしい。自分の新しい一面を発見するかもしれない。あるいは、あなたの周辺で、それらしき人がいれば、ついでにチェックしてみるのもおもしろい。
クイズ1-1「あなたタイプA性格度をはかる」**********
次の質問に3段階のいずれかで答えよ。
いつもそう-------->2
しばしばそう------>1
そんなことはない-->0
( )忙しい生活ですか
( )毎日の生活で時間に追われるような感じがしていますか
( )仕事、その他なにかに熱中しやすい方ですか
( )やる以上はかなり徹底的にやらないと気がすまない方ですか
( )自分の仕事や行動に自信がもてますか
( )緊張しやすいですか
( )イライラしたり怒りやすい方ですか
( )きちょう面ですか
( )勝気な方ですか
( )気性がはげしいですか
( )仕事、その他のことで、他人と競争するという気持をもちや すいですか。
*合計点が17点以上になると、タイプA型と判定できる。
(前田聡、1985 「心身医学」 25、4、298-306より)
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