● 医療現場における説明と同意
他者の人権に深くかかわる裁判員制度に対して、医療の現場では、自己の命がかかわってくる。ここでも、わかる、わかりやすさが極めて大事な問題になってくる。
医師の説明を納得した上で、医師の処置に同意する「説明と同意(informed consent)」という用語とその実践は、今や広く知られている。
裁判の世界と同じで、医師と患者との間には、知識の非対称性がある。
患者が同意するには、その情報の非対称性を解消してからが最も望ましいのだが、現実問題としてはそうは言っていられない。時間的な制約がある。患者が理解してくれるまで待つわけにはいかない緊急の時もある。とりわけ、膨大な非対称性の存在や患者の側に情報の理解不可能性がある場合は時間的制約は厳しい事態を招く。
となると、その時々である程度わかったところで同意するという中途半端な解決が求められることになる。しかし、「ある程度」の判断が、医師にも患者にも難しい。かくして、状況に応じた医師と患者との相互コミュニケーションを折にふれて繰り返しながら、同意の道を探っていくことになる。
一見すると面倒で困難な事態のようにみえるが、しかし、多分、これこそが現実場面でのわかりやすさの扱いとして最適なのではないかと思う。相互コミュニケーションを通してのわかりやすさの構築である。
写真 筑波大学のループ道路
毎年、紅葉が見事なのだが、まだだった。