連想活用術
テーマ:海保の著作物
●海保著「連想活用術」 中央公論新書 絶版
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●連想活用術 心の癒しから創造支援まで
海保博之/著
中央公論新社
\660
1999/11
心の癒しから創造まで
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『連想活用術』を拝読させていただきました。
私には良書や良い考え方を判断するひとつの指標がございます。それは、本を読んで
いて自然に興奮するものは、十中八九良書であるという指標でございます。非常に非
論理的、非理性的な指標でございますが、そのような興奮をおぼえるのは、読んでい
ると自然と抱えている問題が解決されたり、未来へと至る道の展望を想起させてくれ
るからだろうと存じます。つまり、良書は読者に生きる力を与えるのだろうと存じま
す。むしろ、読者に生きる力を与えるからこそ良書なのであるというのが正確であろ
うと存じます。
先生のご著書は常にその“興奮”を感じさせてくれるものと存じます。そして、今回
拝読させていただきました『連想活用術』もまた“興奮”を味あわせていただきまし
た。
全体を通して頻繁に存じたことは、“自分はこのようなジレンマにはまっていたの
か”、“なるほどこのように連想を活用していけば良いのか”というものでございま
した。連想という別の角度から人間の認知に対してより深く見る目を開かせていただ
くことができたと存じます。全体の構成として、癒し(心のコントロール/第2
章)、知識のコントロール(第3章)、創造性(第4章)、そして第5章の現実とのか
かわりを連想と認知心理学の観点から提唱されていることは、まさに現在の日本の社
会の多くの問題や悩みに光を与えるものと確信した次第でございます。正に、非の打
ち所がないものと存じました。
細かく申し上げますと、第2章ではP53~P54にかけての現在の産業構造が「頭と気持
ちが資本の産業構造」という箇所の様々なご提言は心に響いた次第でございます。と
くに「気持ちが資本」という表現には“はっと”致しました。昨今言われている情報
化社会や知識社会では、「頭」の方が重要視されがちでございます。そのような中
で、「気持ちに」ついてのご指摘は大変に私の目を開かせるものでございました。こ
のように考えるとこれからの社会は極めて「認知的」と考えたほうがよろしいので
しょうか。
また、P65~P69の箇所は、個人的側面はもとより社会的な問題にも通ずるものと存じ
ました。あと、P69~P76はどちらかというと連想傾向が強い私には大変にありがたい
ものと存じました。
第3章ではP90からP99までの「連想で知識を活性化する」の部分では、連想をする上
での着眼点、そしてその連想を具現化して意味あるものにしていくポイントがより明
確に、そして単純に示されていて、私の目を大きく開かせ、同時に将来への展望を想
起させていただいたものでございました。このようにはっきりと示していただけます
と、何か見落としが無かったかと心配になったり、思考の迷宮から抜け出す手がかり
を見つけやすいと存じます。
第4章についてはすべてが良かったとしか言いようがございません。しかし、その中
でP106~P108の「創造を生む知的環境とは」、P118とP119の「物語作りや仮説作りも
大切」、P120~P122の「異質な外的資源で連想を刺激する」は特に心に響いた次第で
ございます。心の中で「Wow!」と叫んだほどでございます。また、「創造活動の開始
から終了まで」を段階的にわかりやすくご説明されたものも大変に参考になった次第
でございます。
『逆転の発想』で有名な糸川英夫さんをご存知のことと存じます。私は、“自称”糸
川英夫さんの弟子で、創造性に関しては高校生のころから17年以上意識的に見つめて
まいりました。この創造性の問題は大変に重要と考えており、日本と米国との経済の
差を生んでいる最大の要因はこの創造性の問題だろうと長らく存じております。資源
や人口など潜在的な国力の差が格差を生んでいることは事実であろうと存じますが、
やはり創造性の問題がかなり大きく関与していると存じます。他の要因に関しては日
本人と米国人はそれほど違いは無いだろうと存じます。しかし、創造性に関しては日
米の間に深い深い“谷”があると存じております。これからの日本は何らかの方法で
この谷を越えなくてはならないものと心より存じます。そのような状況の中で、先生
のご指摘はその“谷”に橋を渡すものであると率直に存じた次第でございます。
最後にエピローグのP170からP172までのウェッブサイトに関するご指摘は“ごもっと
も”と存じた次第でございます。早急にこのことの研究と実践が行われ、多くの人の
認識を変え、そして多くの人の生活をより良い方向に変えていくべきだろうと心より
存じます。
(片桐勇治氏より許可済み転載)
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はじめに
プロローグ「連想は,楽し不思議」
●連想ゲームを楽しむ
●連想は多彩な形で起こる
●連想は心の働きの基盤
●連想は気分をも作り出す
●連想は心の世界のさまざまな狭間で起こる
●連想は意識と無意識の狭間で起こる
●連想は自己コントロールできる世界とできない世界の狭間で起こる
●連想は注意の集中と拡散の狭間で起こる
●連想は緊張と弛緩の狭間で起こる
●連想は正誤の狭間で起こる
●連想は論理とヒューリスティックの狭間で起こる
●連想は言葉とイメージの狭間で起こる
●連想は創造と想像の狭間で起こる
●連想は知と情の狭間で起こる
●連想は現実と仮想の狭間で起こる
●連想と連合と
1章 連想は心を映す--連想の精神分析学 本文42枚
1.1 自分の心知る
カウンセリグが今ブーム
自分の心を知りたい
メタ認知によって、自分の心を知る
鏡に映して、自分の心を知る
1.2 連想によって情意の世界を知る
連想検査とは
連想検査が教えるもの
連想で情意の世界を知る
形容詞の語彙を豊富に
連想によって多面的な認識を
1.3 連想によって知識のネットワークを知る
知識はネットワークをなしている
知識の世界を構成するもの
連想で知識の世界を知る
連想マップを作る
連想マップで生きた知識の姿を知る
2章 連想は心を癒す--連想の臨床心理学 47枚
2.1 心の癒しを求めて
無理が通れば道理が引っ込む
休息する
心を知ることが心の癒しの基本
2.2 知ることは癒されること
自由連想法からわかること
連想のおもむくままに
自由連想法が教えるもの
自分を知り癒すための連想を効果的に使う
2.3 連想によって、気持ちををポジティブな方向へ導く
連想を自己コントロールする
気分に一致したことしか連想しない
ポジティブがポジティブをよぶ
気分を変える
連想で気分をコントロールする
連想しない
連想三昧にひたる
連想を変える
どの方略を選ぶか
3章 連想は頭を活性化する--連想の認知科学 50枚
3.1 知的世界にも無意識の世界がある
感情的無意識と認知的無意識と
認知的無意識には2種類ある
眠っている知識を目覚めさせる
3.2 知識を活性化する
10回クイズで遊ぶ
知識が活性化する
命題ネットワークを活性化する
3.3 連想で知識を活性化する
知識の活性化を支援する趣向の数々
全体を意識した連想をする
深い意味づけをする
頭の外に出してみる
4章 連想は創造を支援する--連想の発想工学 50
4.1 創造を生み出すもの
創造性検査に挑戦する
誰もがそれなりに創造的になれる
創造を生む知的環境とは
4.2 連想で創造を促す
創造活動の開始から終了まで
創造を準備する連想術
知識の活性化は創造を妨害する
新しいリンクを張る
自発的にリンクを張る
異質な領域に連想を飛ばす
物語作り、仮説作りも大切
異質な外的資源で連想を刺激する
4.3 無意識の連想が創造を生む
孵卵期と啓示期をミニ体験する
孵化期と啓示に起こっていること
孵化期と啓示期における良質の連想を保証する
5章 連想で現実とかかわる--連想のプラグマティックス 25枚
5.1 連想を現実に対して開く
連想を自閉から解き放つ
適応的に生きるための連想
5.2 現実は連想を作り出す
連想の源泉は条件づけ
現実との結び付きを作り出す
条件づけが示唆するもの
現実は、多彩な知識の源泉
5.3 現実は連想を触発する
現実とことばとイメージと
前に来たことがある感じがする
旅行には事前の情報収集は必須か
連想がもたらす「いいかげんな」現実認識
現実と連想と知識と
エピローグ「連想を生かす現場と連想文化論と」
エピローグその1「連想を生かす現場を見る」
●広告表現は連想を刺激する---連想を生かす現場その1
●絵表示のわかりやすさは連想に依存する---連想を生かす現場その2
●取扱説明書でも連想に訴えてわかりやすくする--連想を生かす現場その3
●連想でデザイン制作をより創造的に---連想を生かす現場その4
●連想で絵画を楽しむ---連想を生かす現場その5
●国語教育で連想を生かす---連想を生かす現場その6
●連想で研究テーマを発掘する---連想を生かす現場その7
●連想で検索を効果的なものにする---連想を生かす現場その8
●連想が老人を元気にさせる---連想を生かす現場その9
エピローグその2「連想から知的文化を考える」
●連想を働かせて知識を温かいものに---連想文化論その1
●連想を許容する---連想文化論その2
●連想の得意な人、不得意な人---連想文化論その3
●連想を妨害するもの---連想文化論その4
●連想読みを支援する電子化ドキュメント---連想文化論その5