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連想活用術

2007-11-05 | 認知心理学


連想活用術
テーマ:海保の著作物
●海保著「連想活用術」  中央公論新書 絶版

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●連想活用術 心の癒しから創造支援まで
海保博之/著
中央公論新社
\660
1999/11
心の癒しから創造まで
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『連想活用術』を拝読させていただきました。
私には良書や良い考え方を判断するひとつの指標がございます。それは、本を読んで
いて自然に興奮するものは、十中八九良書であるという指標でございます。非常に非
論理的、非理性的な指標でございますが、そのような興奮をおぼえるのは、読んでい
ると自然と抱えている問題が解決されたり、未来へと至る道の展望を想起させてくれ
るからだろうと存じます。つまり、良書は読者に生きる力を与えるのだろうと存じま
す。むしろ、読者に生きる力を与えるからこそ良書なのであるというのが正確であろ
うと存じます。
先生のご著書は常にその“興奮”を感じさせてくれるものと存じます。そして、今回
拝読させていただきました『連想活用術』もまた“興奮”を味あわせていただきまし
た。
全体を通して頻繁に存じたことは、“自分はこのようなジレンマにはまっていたの
か”、“なるほどこのように連想を活用していけば良いのか”というものでございま
した。連想という別の角度から人間の認知に対してより深く見る目を開かせていただ
くことができたと存じます。全体の構成として、癒し(心のコントロール/第2
章)、知識のコントロール(第3章)、創造性(第4章)、そして第5章の現実とのか
かわりを連想と認知心理学の観点から提唱されていることは、まさに現在の日本の社
会の多くの問題や悩みに光を与えるものと確信した次第でございます。正に、非の打
ち所がないものと存じました。

細かく申し上げますと、第2章ではP53~P54にかけての現在の産業構造が「頭と気持
ちが資本の産業構造」という箇所の様々なご提言は心に響いた次第でございます。と
くに「気持ちが資本」という表現には“はっと”致しました。昨今言われている情報
化社会や知識社会では、「頭」の方が重要視されがちでございます。そのような中
で、「気持ちに」ついてのご指摘は大変に私の目を開かせるものでございました。こ
のように考えるとこれからの社会は極めて「認知的」と考えたほうがよろしいので
しょうか。
また、P65~P69の箇所は、個人的側面はもとより社会的な問題にも通ずるものと存じ
ました。あと、P69~P76はどちらかというと連想傾向が強い私には大変にありがたい
ものと存じました。

第3章ではP90からP99までの「連想で知識を活性化する」の部分では、連想をする上
での着眼点、そしてその連想を具現化して意味あるものにしていくポイントがより明
確に、そして単純に示されていて、私の目を大きく開かせ、同時に将来への展望を想
起させていただいたものでございました。このようにはっきりと示していただけます
と、何か見落としが無かったかと心配になったり、思考の迷宮から抜け出す手がかり
を見つけやすいと存じます。

第4章についてはすべてが良かったとしか言いようがございません。しかし、その中
でP106~P108の「創造を生む知的環境とは」、P118とP119の「物語作りや仮説作りも
大切」、P120~P122の「異質な外的資源で連想を刺激する」は特に心に響いた次第で
ございます。心の中で「Wow!」と叫んだほどでございます。また、「創造活動の開始
から終了まで」を段階的にわかりやすくご説明されたものも大変に参考になった次第
でございます。
『逆転の発想』で有名な糸川英夫さんをご存知のことと存じます。私は、“自称”糸
川英夫さんの弟子で、創造性に関しては高校生のころから17年以上意識的に見つめて
まいりました。この創造性の問題は大変に重要と考えており、日本と米国との経済の
差を生んでいる最大の要因はこの創造性の問題だろうと長らく存じております。資源
や人口など潜在的な国力の差が格差を生んでいることは事実であろうと存じますが、
やはり創造性の問題がかなり大きく関与していると存じます。他の要因に関しては日
本人と米国人はそれほど違いは無いだろうと存じます。しかし、創造性に関しては日
米の間に深い深い“谷”があると存じております。これからの日本は何らかの方法で
この谷を越えなくてはならないものと心より存じます。そのような状況の中で、先生
のご指摘はその“谷”に橋を渡すものであると率直に存じた次第でございます。

最後にエピローグのP170からP172までのウェッブサイトに関するご指摘は“ごもっと
も”と存じた次第でございます。早急にこのことの研究と実践が行われ、多くの人の
認識を変え、そして多くの人の生活をより良い方向に変えていくべきだろうと心より
存じます。
(片桐勇治氏より許可済み転載)

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はじめに                   

プロローグ「連想は,楽し不思議」       
●連想ゲームを楽しむ
●連想は多彩な形で起こる
●連想は心の働きの基盤
●連想は気分をも作り出す
●連想は心の世界のさまざまな狭間で起こる
●連想は意識と無意識の狭間で起こる
●連想は自己コントロールできる世界とできない世界の狭間で起こる
●連想は注意の集中と拡散の狭間で起こる
●連想は緊張と弛緩の狭間で起こる 
●連想は正誤の狭間で起こる
●連想は論理とヒューリスティックの狭間で起こる
●連想は言葉とイメージの狭間で起こる
●連想は創造と想像の狭間で起こる
●連想は知と情の狭間で起こる
●連想は現実と仮想の狭間で起こる
●連想と連合と

1章 連想は心を映す--連想の精神分析学  本文42枚

1.1 自分の心知る
   カウンセリグが今ブーム
   自分の心を知りたい
   メタ認知によって、自分の心を知る
   鏡に映して、自分の心を知る

1.2 連想によって情意の世界を知る
   連想検査とは
   連想検査が教えるもの
   連想で情意の世界を知る
   形容詞の語彙を豊富に
   連想によって多面的な認識を

1.3 連想によって知識のネットワークを知る 
   知識はネットワークをなしている
   知識の世界を構成するもの
   連想で知識の世界を知る
   連想マップを作る
   連想マップで生きた知識の姿を知る


2章 連想は心を癒す--連想の臨床心理学  47枚

2.1 心の癒しを求めて
   無理が通れば道理が引っ込む
   休息する
   心を知ることが心の癒しの基本

2.2 知ることは癒されること
   自由連想法からわかること
   連想のおもむくままに
   自由連想法が教えるもの
   自分を知り癒すための連想を効果的に使う

2.3 連想によって、気持ちををポジティブな方向へ導く    
   連想を自己コントロールする
   気分に一致したことしか連想しない
   ポジティブがポジティブをよぶ
   気分を変える
   連想で気分をコントロールする
   連想しない
   連想三昧にひたる
   連想を変える
   どの方略を選ぶか

3章 連想は頭を活性化する--連想の認知科学  50枚

3.1 知的世界にも無意識の世界がある
   感情的無意識と認知的無意識と
   認知的無意識には2種類ある
   眠っている知識を目覚めさせる

3.2 知識を活性化する
   10回クイズで遊ぶ
   知識が活性化する
   命題ネットワークを活性化する

3.3 連想で知識を活性化する
   知識の活性化を支援する趣向の数々
   全体を意識した連想をする
   深い意味づけをする
   頭の外に出してみる

4章 連想は創造を支援する--連想の発想工学  50
 
4.1 創造を生み出すもの
   創造性検査に挑戦する
   誰もがそれなりに創造的になれる
   創造を生む知的環境とは

4.2 連想で創造を促す
   創造活動の開始から終了まで
   創造を準備する連想術
   知識の活性化は創造を妨害する
   新しいリンクを張る
   自発的にリンクを張る
   異質な領域に連想を飛ばす
物語作り、仮説作りも大切
   異質な外的資源で連想を刺激する

4.3 無意識の連想が創造を生む
   孵卵期と啓示期をミニ体験する
   孵化期と啓示に起こっていること
   孵化期と啓示期における良質の連想を保証する

5章 連想で現実とかかわる--連想のプラグマティックス 25枚
  
5.1 連想を現実に対して開く
   連想を自閉から解き放つ
   適応的に生きるための連想

5.2 現実は連想を作り出す
   連想の源泉は条件づけ
   現実との結び付きを作り出す
   条件づけが示唆するもの
   現実は、多彩な知識の源泉

5.3 現実は連想を触発する
   現実とことばとイメージと
   前に来たことがある感じがする
   旅行には事前の情報収集は必須か
   連想がもたらす「いいかげんな」現実認識
   現実と連想と知識と
   
エピローグ「連想を生かす現場と連想文化論と」     

エピローグその1「連想を生かす現場を見る」

●広告表現は連想を刺激する---連想を生かす現場その1
●絵表示のわかりやすさは連想に依存する---連想を生かす現場その2
●取扱説明書でも連想に訴えてわかりやすくする--連想を生かす現場その3
●連想でデザイン制作をより創造的に---連想を生かす現場その4
●連想で絵画を楽しむ---連想を生かす現場その5
●国語教育で連想を生かす---連想を生かす現場その6
●連想で研究テーマを発掘する---連想を生かす現場その7
●連想で検索を効果的なものにする---連想を生かす現場その8
●連想が老人を元気にさせる---連想を生かす現場その9

エピローグその2「連想から知的文化を考える」
●連想を働かせて知識を温かいものに---連想文化論その1
●連想を許容する---連想文化論その2
●連想の得意な人、不得意な人---連想文化論その3
●連想を妨害するもの---連想文化論その4
●連想読みを支援する電子化ドキュメント---連想文化論その5

海保の業績リスト一部

2007-11-05 | 心の体験的日記

11. 説明・指示における具体表現をめぐって
筑波大学心理学研究 (大学・研究所等紀要 、1993 ) / 15 , 107-111
12. ヒューマン・エラーとセルフ・モニタリング
至文堂「現代のエスプリ」 (その他 、1993 ) / ,
13. リード説明の型とその心理的効果
山形大学紀要 (大学・研究所等紀要 、1993 ) 10 / 4 , 495-503
14. Human eroors and self monitering
(その他 、1993 ) / ,
15. 行為とうっかりミスと事故と
教育と医学 (その他 、1994 ) / 11 , 77
16. わかるとはどういうことか
児童心理 (その他 、1995 ) / 6 , 25
17. 知的個性を生かすための知能検査の意義と役割
指導と評価 (その他 、1995 ) / 3 , 4-9
18. ことばで機械と交流する-認知的インターフェースとしてのことばの設計
日本語学 (その他 、1995 ) / 9 , 28-36
19. 情報活用能力を育てる学習指導の考えどころ
指導と評論 (その他 、1995 ) / 10 , 6-11
20. 新しい知能観と測定技術を踏まえた個別式知能検査の開発可能性
筑波大学心理学研究 (大学・研究所等紀要 、1996 ) / ,


わかった、なるほど

2007-11-05 | わかりやすい表現
わかるとは、大きく、2つのタイプがある。ピアジェの用語を借りるなら、同化によるわかり方と、調節によるわかり方とである。
同化によるわかり方とは、わかるべき新しい情報が、頭の中にある知識の一部として取り込まれた時である。この時は、既有知識の体系には変更はなく、ただ、新しい知識要素が追加されただけである。
たとえば、「山田君が結婚する」という情報を知ったとき、「山田君」についてすでに既有知識があれば、新たに「結婚」という情報を追加すればよい。そして、それは、それでわかったということになる。
これに対して、調節によるわかり方とは、新しい情報の入力によって、頭の中にある知識の体験が組み換え(更新)られることである。
たとえば、「山田君があなたの部下である高橋さんと結婚した」となればどうであろうか。山田君と高橋さんそれぞれについてもっていた知識体系は、ここで一挙に変更されて、あらたな知識体系が作り出されることになる。同化によるわかり方が、「わかった、それでどうした」ということになるが、調節によるわかり方は、「わかった。なるほど」となる。

写真 我が家の椿

心理研究者のモラルコード

2007-11-05 | 認知心理学
心理学方法論******   

心理研究者のモラルコード  人を使う研究者が守らなければならないこと

●研究者も人であり研究者でもある  研究者も研究の場を離れれば一人の生活者である。生活者としてのモラルを守ることは当然である。ところが、これが意外と難しい。とりわけ、大学をずっと仕事と生活の場にしてきた者は---日本では、ひとたび大学教官になると定年まで外の世界に出ることは極めてまれ。***によると、***%---、外の世界を知らないだけに、世間一般の生活者としてのモラルを守れないことが多いように思う。そこにこそ個性があり、アイデンティティがあるとも言えるし、とりわけ横ならび意識が強い日本社会ではむしろ希少価値もあるとも言えるが、研究者が世間---研究者の生活の中にも「世間」(1)が実はあるのだが---と接触するようなところでは、軋轢が発生してしまうことも多い。  また、心理研究者のモラルにいく前にさらに研究者としてのモラルに関しても一言。研究者モラルコードとは、研究に携わる者なら誰しもが守らなければならないものである。たとえば、「社会、人を貶めるおそれのある研究はしない---判断が難しいが---」「成果は公開する」「無断で他人の研究を使わない」などなど。もちろん、ここでも、ときどき研究者のモラル違反が発生することもあるが、逆に、「世間の人」が研究的な仕事をするときに、この研究者モラルに違反することが多い。たとえば、筆者の体験でも、こんなことがあった。  
・アイデアから論文のまとめまで人から多大の支援を受けながら、自分一人がやっ   たかのようにして論文発表をしてしまう  
・天真爛漫に人の研究成果を使いながら、引用文献を挙げない  
・人に研究させておきながら---もちろん、研究費はもらうのであまり大きな口で  は言えないのだが---、自分で行なった研究であるかのごとく発表してしまう  
 さて、人として、研究者としてのモラルコードを守っただけでは、「心理」の研究者は十分ではない。研究対象が人であるだけに、さらに厳しいモラルコードがある。

●心理研究者のモラル  古澤ら(2)は、研究者倫理として、「協力者の尊重」「守秘義務」「協力者への恩恵(得られた成果を協力者に還元する)」の3つを挙げている。アメリカ心理学会は、もっと細かく次のような10の原則を定めている。要点のみ摘記。
(1)研究が倫理的に容認できるかどうか
(2)参加者を危険にさらす度合いをあらかじめ検討する
(3)協同研究者も同様の責任を負う
(4)研究内容の説明責任
(5)研究の必要上、隠ぺいやごまかしを使うときは十分に慎重であること (6)参加者はいつでも参加を断ることができる
(7)被験者を危険な状態にさらさない
(8)研究成果を参加者に知らせる
(9)参加者に好ましくない影響を与えたときは、それを除去、矯正する
(10)参加者についての情報の守秘義務  

かつて、行動主義者・ワトソンが、生後11ケ月のアルバート君を使って、情動条件づけの実験を行なったことがある。白ネズミを見せては大音響を出して、白ネズミに対する恐怖を条件づけるというものである(注3)。10のモラルコードを適用するとどうなるであろうか。

●心理研究者のモラル・ハザード  このように文章として明文化されると、モラルコードの遵守はごくあたり前で、何を今さらという感じがするかもしれない。しかし、実際には、厳密にこれらのコードを守ろうとすると、いくつかの困難に直面する。心理研究者の側からすると、一定の人数を一定の期間内に集めて研究しなければならないので、どうしても無理をすることになる。これが、当たり前のようになると、モラル・ハザード(モラル崩壊)をきたす恐れがある。  

その1。心理実験や調査には、不本意な時間的な拘束、さらには、不本意な作業がどうしても入ってくる。実験、調査への参加は任意、いやなら止められるとは言っても、それでは所定の被験者が確保できない。英文の論文では、「被験者は授業の単位取得要件の一部として参加した」との一文が入っていることが多い。しかし、被験者からすると、これは、一種の強制に近い。前述のコード(8)成果公開によって償うことで我慢してもらうことになるが、心理関係以外の授業では、あまり償いにはならない。  

その2。認知研究が盛んになるにつれて、被験者に過大な要求をする研究が多くなってきたように思う。「今、あなたが考えていることを口に出して言ってください」と指示されて(注4)、びっくりしない人はいないのではないか。過大な心的作業は、被験者に不全感を残す。しかし、研究者からすると、データはほしい。そこで無理を言うことになる。被験者へのアフターエフェクトが多いに気になるところである。

注 (1)研究者の生活の中の「世間」とは、就職、昇進、名声、評価などにまつわること。研究者仲間では「俗事」などと言って軽蔑的にみるのが「格好よい」とされている。内実は、研究者の「世間」は、口外できないほど「世間離れ」しているようなところがある。
(2)古澤頼雄ら(2000)「研究の倫理」 「発達研究の技法」福村出版に所収。 なお、ここで言う協力者は、実験に協力してくれる人の意味である。日本では、被験者(subject)が一般的だが、英語論文では、participantが最近では一般的。
(3)WATSON,J.B. (1930) 安田一郎訳「行動主義の心理学」河出書房新社
(4)プロトコル分析という。認知研究の切り札のごとく多用されたこともあった。 海保・原田編著「プロトコロ分析入門」(新曜社)参照

小沢党首

2007-11-05 | 心の体験的日記
突然が最近の日本の政界には多すぎる
それにしても、小沢氏の小児体質がここにきて暴露
これが、日本の政治の一翼を担ってきたのだから、
日本の政治レベルも低いものだ
次は、管さん、あなたしかいないよ。

写真 無駄な公共工事も次第に形をなしてきた
びっくり仰天するようなものができるはず。
あらためて無駄を実感するはず。

アクセス数解析

2007-11-05 | Weblog
11/04(日) 368 pv 151 ip -位(890951 BLOG中)
11/03(土) 529 pv 158 ip -位(890249 BLOG中)
11/02(金) 543 pv 199 ip -位(889590 BLOG中)
11/01(木) 666 pv 250 ip -位(888914 BLOG中)
10/31(水) 414 pv 172 ip -位(888195 BLOG中)
10/30(火) 530 pv 212 ip -位(887491 BLOG中)
10/29(月) 595 pv 220 ip

とうとう週間、最低を記録
月曜日の回復を期待

写真 近所の和菓子やさん
展示ロビーもある
なんと、足湯もある
サービス満点だが、甘いものなので、1月1度が精一杯

海保の最近の著作

2007-11-05 | わかりやすい表現
07-11-5海保
海保博之・楠見孝監修 2006年6月20日 心理学総合事典
朝倉出版

海保博之 2006年6月20日 実験法
海保博之・楠見孝監修 2006年6月20日 心理学総合事典
朝倉出版所収 32-34

海保博之・宮本聡介 2007年2月20日  安全・安心の心理学;リスク社会を生き抜く心の技法48 新曜社

海保博之 2007年2月26日 認知と学習の心理学;知の現場からの学びのガイド 培風館
海保博之 2007年11月11日 説明社会の心理学的諸問題と今後の展開
比留間太白・山本博樹編「説明の心理学;説明社会への理論・実践
的アプローチ」ナカニシヤ出版所収、225-234

写真 公園の紅葉

感情と思考

2007-11-05 | 認知心理学
近代社会においては,感情(もしくは情動)と思考(もしくは理性)は,「水と油」のようにともすると相対立するものとして扱われてきた二つの心の領域である.この二つをタイトルに掲げた事典の作成には,いわばデカルトとフロイトが共編者となったような違和感があるかもしれない.しかし,近年の心理学における知見の積み重ねや,ロボット工学をはじめとする科学技術の進歩において,両者は常に対立するものでも,相互に独立したものでもなく,とりわけ、日常的には密接に関連(融接)してヒトを支えるものと考えられるようになってきた.
 本事典は以上のような知見の蓄積を踏まえて,感情管理や思考管理が重要になってきているビジネスなどの社会における実践の場や,たとえばヒューマノイドロボットにみられるような,科学技術におけるヒトの感情や思考への強い関心に応えていこうとするものである.感情や思考に関わる約200に及ぶ様々な分野にわたる重要なキーワードについて,それぞれを見開き2頁(もしくは4頁)単位で,わかりやすく解説する.