仁平義明(東北大学)
「日常エラー」と「高安全度必要場面のエラー」
日本情報ディレクトリ学会誌 2008/04/10 vol 6,25-30の紹介
高安全必要場面での日常認知モードの進入仮説
われわれの日常生活での認知活動のモードは、次のようなある「基本的設定値(デフォルト値)」に設定される傾向がある。この特徴が、結果として、医療、交通、原発などの高安全必要場面でも発現することで、HEが発生する。
日常的認知モードの特徴
1) 適度で経済的な精度、明細化レベルに設定されている
例 10円玉の絵を描いてみよ。どれほど、現物と違うことか
注 現実には、5種類の識別ができる程度の情報しか処理しない
2) 半自動化されている
例 「お」をできるだけ早くたくさん書いてみよ(書字スリップ)
注 「お」スキーマの活性化が関連する情報を同時に活性してしまう
3) 情報の照合や判断は、高次情報の照合や、部分照合に設定されている
例 似顔絵
注 「だいたい」似ているが大事。
4) デフォルト値を変更しないようにしている(現状維持バイアス)
例 患者の取り違えエラーでは、患者の見かけの違い、たとえば、頭髪が短いなーと
思っても、それは、手術のため散髪しとのだろうと解釈してしまう
注 エラーであると認めると修正のための社会的なコストがかかるのもあるし、
認知的な不協和を避けたい気持ちも働く。