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解説にもいろいろある

2011-04-20 | 認知心理学
コラム「認知心理学の用語を中高校生用に解説する」***
比較的よく知られている用語「****」を学生が解説したものを挙げてみる。「具体例を挙がる」「日常用語で解説する」「たとえを活用する」とよいことを指示してある。なお、ビジュアル表現は今回は使わないことにした。
以下、「アイコニック・メモリ(iconic memory)」を3人の学生が解説したものを紹介する。どれがベストの解説か。

○HA君の解説
 友達と話をしている時に、全く意味のわからない単語が出てきたらどうしますか?大抵の場合、その単語を鸚鵡返しにして意味を尋ねると思います。考えてみると不思議な事で、どうして意味も分からない単語を喋る事が出来るのでしょう。
 私たちは、ほんの短い間であれば、色や音などの外部からの刺激を、意味も何も関係なくそのままの形で自分の中に留めておく事ができるのです。これを認知心理学では「感覚記憶」と呼んでいます。アイコニック・メモリーは、視覚情報の感覚記憶です。
 スパーリング(1960)が行った実験の中で、いくつかの意味の無い文字列をごく短時間被験者に見せてその直後に復唱させたところ、一部の文字だけ復唱させる方が、全部の文字を復唱させるよりも正解率が高い事が分かりました。これは、全部の文字を復唱する場合、復唱している間にどんどん文字を忘れていってしまう事を示しています。更に、文字を見せてから復唱させるまでの間の時間が0.5秒を超えると両者の正解率に差が無くなる事が分かり、この事からアイコニック・メモリーは1秒以内に消えてしまうものである事が明らかになりました。

○PK君の解説
 アイコニックメモリーとは、感覚記憶(知覚された情報が短期記憶として次の処理を行うため選択されるまでの間、一時的にその情報を保存しておくこと。視覚、聴覚、触覚、嗅覚など、各感覚ごとに保存様式は異なっている。)のうちの、視覚情報(目から入ってくる情報)に関するもののことであり、容量は大きいのだが保存される時間が短く、約500ミリ秒しか保存できないといわれている。また、聴覚的な情報(耳から入ってくる情報)はエコイックメモリー(聴覚的感覚記憶)といい、処理容量は小さいのだが、保存時間がアイコニックメモリーより長く、約4秒から5秒の保存が可能であるとされている。これらの保存された情報がアイコンと呼ばれている。しかしこのように一瞬で消えてしまう情報でも私たちは、興味を引くものには眼を向けるし、その結果、注意をむけられた一握りの情報だけが短期記憶として保存される。
 これはナイサー(Neisser,U)による用語で、スパーリングは視覚的情報貯蔵(visual information storage)と呼んだ。

○YM君の解説
 記憶には大きくみて短期記憶と長期記憶があります。短期記憶をつかさどるのは、アイコニックメモリとワーキングメモリという2つのメモリです。見たり聞いたりしたものは、そのままの生の記憶として、アイコニックメモリにはいります。しかし、ここに入った記憶は、数百ミリ秒という、一桁以下の短い時間しか貯蔵できません。これは次々に新しい事象が目・耳・鼻・口・皮膚といった五感を通じて入ってくるので、長く貯蔵する必要のないものが多く、記憶内容はすぐ次々に揮発することが必要だからです。なので、アイコニックメモリはとてもこわれやすいものであるということができます。ここが強い人は、一瞬見たものの細部を言い当てられます。この、アイコニックメモリという考え方は、スパーリングという人が、実験をして、1960年に打ち出したものです。スパーリングの実験では、観察者へ、短い時間に、3〜16字で構成されている英数字が、提示されます。そして観察者はその後、提示された、目に見える表示の中の、文字の部分集合(3つか4つの連続した文字)を特定する報告を行います。この実験によって、スパーリングは、短い間隔の追提示において、提示された文字の全体から、何の関連もなく無作為に思い出すよりも、このように部分集合的に思い出す方法の方が、観察者はものごとをよく覚えているのだということを明らかにしました。この記憶が、アイコニックメモリです。
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指差し呼称

2011-04-20 | 安全、安心、
「安全・安心の心理学」より

指差呼称


           ———指先と口先で安全の確認

●指差呼称
危険予知訓練とならんで、視差呼称訓練は、安全研修の切り札の一つである。
注意すべき対象を指で差し、思い通りの状態になっているかどうかを確認して呼称するだけのことであるが、これが安全確認には効果がある。
旧国鉄の誰かが発明したらしい。それはさておくとして、ここでは、その指差し確認の心理学的な意味づけをしておくことにする。

●確認を確実に
確認行為を確実におこなうことは、うっかりミスを事故につなげないためには必須であるが、その確認行為もいつも万全というわけではない。そこで、確認行為をより確実なものにすることが求められることになる。
人はいつでも何かをするときには、そうするための意図、おおげさに言うなら行為計画を持っている。だからこそ、その意図と違った行為をした時には、ただちに訂正行為をおこなう。ところが、「意図」と「ただちに」のところで、確認をおそそかにさせるものがある。
まず、行為意図である。我々は何かをするときに、いつもそのことを明示的に意識しているわけではない。食事をするような習慣的な行為の時は、ほとんど行為意図を意識することなしにさまざまな行為がおこなわれし、そうでなければ生きていけない。コーヒーの中に砂糖を入れてしまった時にはじめて行為意図を意識して、しまったとなり訂正行為をする。
やってしまってからでも訂正すればほとんどのうっかりミスは事なきをえるのだが、車の運転のように事態が時間的に常に切迫している時では、エラーがただちに事故につながってしまう可能性が高くなる。「ただちに」訂正しても間に合わないのである。ちょっとした脇見が魔の一瞬になりがちなのである。

●指差呼称は、ダブルチェックである
 いつものように部屋に施錠する。この段階でも、少なくとも無意識のうちに確認行為をしていることに注意されたい。さらに、鍵を指で差して「施錠よし」と呼称する。施錠を確認するという意図が、指差呼称という行為によって確実に(2重に)おこなわれることになる。
これなら、最初の行為意図が明確に意識化されていない時でも、指差呼称の段階で確認行為の意図ははっきりと意識化できるので、いわば一人でするダブルチェックになっている。

●さらに指差呼称にはどんな効果が期待できるか
指差呼称では、指で差すことで、そこに注意を焦点化することになる。注意を焦点化すれば、それだけ情報処理は効率的かつ精緻になる。ぼんやりしていたら見えなかったものが見えることもある。
これが指差呼称の効果の一つである。さらに、行為の意識化の効果も期待できる。習慣的な行為は意識的な努力をせずとも自動的にどんどんおこなわれていく。いつもと状況が同じなら何も問題ない。しかし、状況は時々刻々と変化する。コンロでお湯をわかそうと火をつけたら、子供が泣き出してしまうこともある。インターフォーンに対応しなければならないこともある。
こんな時でも、コンロの火の消化というような、事故と直結する行為は必ず指差確認、と決めている(習慣づけている)なら、魔の一瞬を未然に防ぐことができる。
行為の意識化効果に付随して、行為が記憶に残る効果もある。よくあるのは、施錠したかどうか、火を消したかどうかがはっきりしないために、もう一度、部屋に戻って確認するというケースである。現実モニタリングの混乱と呼ばれている現象である。意識的な努力なしにおこなう行為は、現実モニタリングが適切になされないために、こうしたことがおこってしまう。指で差して口で言うような行為は、しっかりと記憶もされているので、混乱は起こらない。
指差呼称の4つ目の効果は、行動調整効果である。指で差す、口に出すという行為、やや大げさな感じがするが、それが、習慣的になにげなくやっている一連の行為の流れを調整することに役立っている。危険、事故に直結する行為の直前では、指差呼称を必ずおこなうような仕掛けが必要である。
 指差呼称の効果の最後は、周囲の人との情報の共有である。仕事をするような時には、周囲に仲間がいる。そうした人々に、自分の行為が目に見える、音に聞こえる形で示せることの利点は大きい。とりわけ、組織の安全風土の醸成には寄与するところが大きい。

●指差呼称の形骸化
指差呼称の効果をたくさん挙げきた。ところが、効果があるからいつでもどこでも指差呼称を、というわけにもいかないのである。それは、指差呼称ばかりしていると、それが形骸化してしまって、普通の習慣的な行為と一緒ということになりがちなのである。指差呼称はしているものの、その行為の実質が伴わないである。
形骸化の克服はなかなか難しい。指差呼称をより複雑にするとか、他の確認行為とセットにするとかといった確認の多重構造化も考えられるが、それがひどくなると、確認のために仕事が停滞してしまうというパラドックスに陥ってしまう。(K)




安全・安心の心理学

2011-04-20 | 安全、安心、
ワードマップ 安全・安心の心理学―リスク社会を生き抜く心の技法48
クリエーター情報なし
新曜社

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第1部 危険予知の心の技法
第2部 安全保持の心の技法
第3部 危険対処の心の技法
第4部 安全・安心回復の心の技法

風評被害「安全・安心の心理学」

2011-04-20 | 安全、安心、
風評被害
―風評がもたらす莫大な損失―

    

 
風評被害の規模
 1999年9月30日に発生したJCO臨界事故による風評被害の影響は甚大だった.東海村周辺には干し芋,アンコウ,納豆などの特産品がある.しかし事故からしばらくの間は,これら特産品に放射能の影響があるかもしれないという風評が広がり,買い控えが起こっている.東海村に隣接するひたちなか市では,老舗ホテルが倒産に追い込まれるなどの影響があった.東海村から数十キロ離れた県内の観光地でも,観光客などが激減し,苦しい経営を強いられた企業があった.この事故によって,2001年3月までに補償の対象となった額は150億円を超えている.
 いったん風評が表に出ると,それによる経済的損失は億単位になるケースが多い.風評被害の補償は事故を起こした企業にゆだねられる.被害による影響の査定も難しく,その金額も膨大になることから,企業にとって大きな損失になることは言うまでもない.

風評被害とは
 ところで,そもそも風評被害とはどういったものなのだろうか.堀(2003)注1)は風評被害を「実際には起こっていない,あるいは実際よりも誇張された出来事がメディアを通じて流布することによって,特定の人や地域に経済的な悪影響を与えること」と定義している.風評被害は,実際の事故とは直接かかわりのないところで生じる経済的な損失であり,事故による2次災害の1つと考えてよい.ではそのもととなる「風評」とはどのようなものだろうか.
風評,流言,うわさ,デマ,風説,口コミ,造言,など,コミュニケーションを通して人から人へと情報が伝えられていく現象を表現した言葉は多くある.こうした用語の整理は廣井(2001)や竹中(2005)に詳しく記述されてる.なお,風評と流言は同義に使われることがほとんどであり,本説ではこの2つを明確に区別して使わない.
なお風評・流言といわれるものは,人間の言語活動に支えられており,情報に接した人々の感情体験を反映したものであるから注2)心理学的な関心を含んだ現象であることは間違いない.

風評伝達のメカニズム
 流言(rumore)を心理学的なモデルとして定式化した有名な理論に,オールポートとポストマン注3)がある.彼らは,流言の量を,その流言に係わる問題の重要性と状況の曖昧さの積(流言の量(R)=重要性(i)×あいまい性(a))で表現した.
ただし流言が広まるにはもう少し条件が必要である.
第1に,流言のもととなった事象に対する感情反応がある.不安,不満,恐怖などの感情が強ければ強いほど,流言は広がりやすい.恐怖流言,分裂流言,願望流言のように,感情内容の質にもとづいて流言を分類することもある(注4.
第2に,人間には曖昧さを放置できない性質がある.曖昧な状況を意味付けし,曖昧な状況の理由を知ろうとする.ある種の知的欲求ともいえる.流言という行為自体が,知的欲求を補う作用をしていると解釈することもできる.
第3に,人間には情報誇示の欲求がある.ほかの人が知らない情報を流言という形で伝えることで,ある種の優越感を得ることができる.これが流言の広がりをさらに加速させる.ところで私たち人間には,自分が語った内容を,自分が語らなかった内容よりも強く信じる傾向がある.これをSIB効果(注5という.うわさにリアリティを感じる理由にはSIB効果の影響があるかもしれない.

メディアの影響
 先に説明した流言のメカニズムは,個々人に焦点を当てたものであった.しかし昨今の風評が広まる背景には,メディアやインターネットなどの情報網の影響を無視することはできない.私たちは新聞・テレビ,さらにはインターネットなどを通して,直接経験できない世界を間接的に経験する.つまり現実世界に対する人の認識は,メディアによって再構成されたものだといえる.
 人々の現実認識に対するメディアの媒介的な影響を示した代表的な現象の1つに,議題設定効果がある(注6.これは,マスメディアがある特定のトピックを強調すればするほど,そのトピックに対する人々の重要性の認知が高まるという現象である.
ある地域でダイオキシンによる農作物の汚染疑惑が発覚したとする.もしこの事実をマスコミが取り上げなければ(議題にあげない),この地域の農作物を入荷している全国の消費地域に影響は及ばない.しかしこの疑惑をマスコミが取り上げれば(議題にすれば),その報道に触れた人々は,その情報に対する重要性を認知し,その結果関心度が増し,農作物に対するリスク認知の度合いも高くなってゆく.その結果買い控えなどによる風評被害が発生してゆく.また,重要性の認知が高まることで,風評として広まってゆく可能性がより高まることは,先ほどのオルポートらのモデルからも容易に想像ができる.


注1)堀(2003) メディア事故をどのように報道したか ―風評被害をキーワードに― 岡本浩一・今野博之(編) リスクマネジメントの心理学 第3章, Pp. 67-90.
注2)廣井脩(2001)
注3)Allport G. W. & Postman, L. 1974 The psychology of rumor. New York: Henry Holt.(南博訳 1952 デマの心理学 岩波書店)
注4)Knapp, R. H. 1944 A psychology of rumor. Public Opinion Quarterly.
注5)Higgins(1981)
注6)McCombs, M. E. & Show, D. L. 1972 The aggenda setting function of mass medlia. Public Opinion Quarterly, 36, 176-187.

(宮本聡介執筆)

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ワードマップ「安全・安心の心理学」海保・宮本著 新曜社 より

わかりやすい説明と表現の心理技法

2011-04-20 | わかりやすい表現
保存用

07/6/29海保博之
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25文字 224行(9.3ページ) 5600文字  締切7月12日
わかりやすい説明と表現の心理技法——効果的な
研修を実施するために
東京成徳大学 海保博之

●はじめに
本稿では、保護司どうしの研修を効果的なものにするための説明と表現について考えてみたいと思います。しかし実は、仲間内での説明と表現には、多くの説明と表現の場で克服しなければならない重要な課題である①問題意識の共有の問題、②知識ギャップの問題を避けて通ることができますので、事はずっと楽になります。

ちなみに、①問題意識の共有とは、研修参加者間で研修テーマについて研修の意義や基本的な問題について共通した認識があること、②知識ギャップとは、参加者はテーマに関連した基本的な知識の量と質にギャプがあるということです。
通常の場でのわかりやすい説明と表現には、この点をいかに克服するかが最大の障害になります。たとえば、教師が子どもに、医師が患者に、説明と表現をする場と比較してもらえば、ここでの言いたいことをおわかりいただけると思います。

そこで、本稿では、この2つの重要な課題はとりあえずはずして、仲間内の説明と表現をわかりやすくするための心理技法をいくつか紹介してみたいと思います。
なお、単なる技法とせずに、あえて「心理」を冠したのは、情報の送り手、受け手の頭の働きを基本に考えることを伝えたいためです。

もう一つ、ここでは、説明はプレゼンテーション、略してプレゼン、表現はそのための提示資料あるいはレジメの意味です。話し手のプレゼンを受け手が聴いて理解する場を想定して、以下、話を進めたいと思います。

●構想を精選する
 受け手にとって一番困惑させられるのは、話し手が何を言いたいのかが皆目検討がつかないときです。おまけに、そういうプレゼンに限って、いつ果てるともなく延々と続くことが多いものです。
こうした困ったことが発生する原因は、言いたいこと、つまり構想がきちんと精選されていないことによるものが大部分です。思いついたことをだらだらと話すからです。
かりにその時その場での即興のスピーチを求められたとしても、それでは、「3つほど、思いついたことをお話しさせていただきます」あるいは、「いろいろお話したいことはありますが、一つだけ」との前置きをいれるだけでも、スピーチがぐっとひき締まります。
30分以上のプレゼンでは、何を話すかをきちんと決めておかなければなりません。そして、そのことをプレゼンの最初にはっきりと受け手に表明する必要があります。あいさつや謙遜や言い訳を最初にするのは忘れないが、何を話すかを話さないのが日本人のプレゼンの特徴の一つと言われているくらいです。
さて、その構想の洗練です。
60分程度の長さのプレゼンを想定しても、その中に込められるサブテーマは、ぜいぜい5つくらいです。第1から第5くらいまでが主要な構想の単位になります。本で言うなら、章です。その構成をまずは、はっきりとさせる必要があります。
たとえば、5つのサブテーマが並列に並ぶのか、それとも、ツリー状になるのか、時系列的になるのかといったことを明確にする必要があります。そして、それをプレゼンの冒頭に口頭であるいはビジュアルで(視覚的に)示します。

図1 サブテーマの構成のパターン例
並列型    ツリー型     時系列型
テーマ 1    1         1
    2      2       V
    3        3     2
    4    4         V
    5      5       3
(編集者へのお願い)時系列型のVは下向きの矢印になります
 これを習慣づけてしまえば、構想が整理できるし、冒頭に挙げたような受け手の不満とは無縁な話ができるようになります。また、時間配分もできるので、だらだら話になることを防ぐこともできるはずです。

●パワーポイントの登場でプレゼンが変わった
最近は、ほとんどが、パワーポイントを使うプレゼンになりました。それに伴って、プレゼンが劇的に変わりました。講演会場だと、画面が中央、後援者は隅の演題の陰から、という場の設定が一般化しています。
  これでは、講演者の「見た目」が見えません。プレゼンのもっている、講演者が見えることによる効果がまったく発揮できなくなってしまいました。学会講演ならいざ知らず、普通のプレゼンでは、もっと講演者が見えるようにするべきだと思います。
「人は見た目9割」(新潮新書)というベストセラー本がありますが、そこまではいかないまでも、見た目にも、受け手の理解を助ける情報がたくさんあることを知るべきです。
パワーポイントをたんたんと解説するのは、原稿を読みあげるプレゼンとほとんど同じです。わずかに、ビジュアル化することによる理解支援の効果を期待できるくらいです。
からだ全体を使ってのプレゼンは、迫力を演出できます。受け手をひきつけ感動させることさえできます。どこが一番訴えたいところかも伝えることができます。
せひ、演台の砦から出て受け手と直接向かい合うプレゼンを心がけてください。
もう一つ、関連して述べておきたいことがあります。それはパワーポイントの資料の配付です。映写して見せるものを手元に配布するのが一般的ですが、講義調のプレゼンでは、書き込みしたいとの受け手の気持ちもあるので、これでよいと思います。ただ、それでも、話し手はコンピュータの画面をひたすらながめ、受け手もまたひたすら資料をながめるような硬い雰囲気は、せっかくのプレゼンの良さが発揮できていません。
そこで、プレゼン中は、資料を配付しないで、終了後配布、あるいは、基本的なスライドだけ配布して、映写はそれ以外のものを含めたものを用意する、といった工夫もあってよいと思います。

●わかりやすい資料を作る
パワーポイントの資料作りを想定して4つの作成指針を述べてみますが、これは、通常のレジメ作りにもそのまま転用できます。

指針1「全体と部分の関係をわからせる」
都会のど真ん中で迷子になってしまうような感じのプレゼンに遭遇したことはありませんか。今自分がどこにいるのかが皆目わけがわからなくなってしまうのは、プレゼンでも不安なものです。
受け手をこうした状態にしてしまうのは、全体—部分の関係への配慮を欠いたプレゼン、資料作りをしてしまうからです。
実は全体—部分関係をわからせるためのさままざな仕掛けがすでに一般の本や文書作りにはあります。ただ、それが何のためなのかの認識がないだけです。それらをあげてみましょう。
①概要 全体の枠組みを最初に知らせます。
②目次 全体が一瞥できて、各部との関係がわかるようになっています。
③項番 「第1」「1—1」「1—1—1」によって、階層がわかるようになっています。
④フッター/ヘッダー  頁の最上部か最下部に章、節の見出しを入れることで、内容的な全体—部分関係がわかるようになっています。
⑤ノンブル(頁番号) 1/4のように表示することで、今見ているのがどのあたりかがわかります。
⑥参照明記 「これについては、すでに2−2で述べた」などと記すことで、そことの関係がわかります。
こうした伝統的に使われている文書作りの仕掛けの意味を考えて使えるようにしたいものです。

図2 典型的なレジメの形式

(編集者へお願い)図の下の線は、波線にして、途中で切ったことがわかるようにしてください。




指針2「メリハリをつける」
減り張りと書きます。大事なところには張りを、そうでもないところには減りをということです。要するに、大事なところは目立つようにすることです。
図2を見てください。かなり思い切ってメリハリを付けてみました。①文字のサイズを変え、②項番を使い、③下線、ゴシック体を使ってみました。あとは、色を付ければ、完璧です。だだし、色については、次の指針でひと言ありですが。
メリハリを付けることによって、受け手のほうは、何が大事なことかが、見てわかります。この「見てわかる」が大事なのです。読む前に何が大事かがわかれば、それに最大の注意を注いで読むことができます。注意資源の無駄使いをしないですみます。これがメリハリ付け表現の心理的な意味です。
なお、プレゼンでは、文書でのこうしたメリハリ付けと似た役割を果たすのが、見た目、つまり、表情やジェスチャーやパラ言語(抑揚な声の調子など)です。

指針3「色を使う時は慎重に」
パワーポイントの凄さには驚かされてきましたが、とりわけ、色つけの簡便さにはびっくり仰天しました。
一般に色の表現効果には、大きく、感性効果と情報伝達効果とがあります。感性効果とは、気持ちの良い色とか言うように、感情を喚起する効果です。情報伝達効果とは、違いをわからせる(弁別効果)、色で意味を伝える(識別効果)、さらに実物感を出す効果です。
このように、色は、プレゼン事態に限定しても、それをうまく使いこなせるなら、めりはり付けには、これほど恰好の道具はありません。
しかし、色をうまく使いこなすには、それが非常に効果的であるだけに、かなりのセンスと熟練が求められます。その点で自信のない人は、黒一色でやるほうが無難です。それだけでも、指針2に述べたように、結構、多彩なメリハリ付けの仕掛けを活用できるからです。

指針4「読みたいと思わせる」
これはわかりやすさのカテゴリーには入らない指針ですが、大事なことなので、指針の最後にひとつ入れました。
資料作りには結構努力が必要です。そのためでしょうか、作った資料は、受け手は必ず読んでくれると思いこむことが多いようです。しかし、これは大いなる錯覚です。
むしろ、受け手はできれば、読みたくない、見たくないとの思いでいるとの前提で資料作りをするほうが安全です。
・ 頁レイアウトに余裕を持たせる
・ 文字ぎっしり感を与えない
・ 図表などを入れる
・ 時には、漫画風のイラストなども入れてみる
といったような工夫も必要です。

●それでも知識ギャップには要注意
冒頭で、仲間内の研修では、知識ギャップを考慮に入れなくて良いので楽だと述べました。確かにその通りですが、それでも、たとえば、ベテランと初心者、よく勉強している人とそうでない人はいるものです。さらに、過去の知的経験の蓄積の違いもあります。医師と患者、教師と子どもほどではないにしても、仲間内でも微妙に知識ギャップはあります。だからこその研修ですね。
したがって、まったく知識ギャップを想定しなくてもよいというのは言い過ぎです。最低限、次のような配慮は必要です。

配慮1「今日のテーマに参加者は馴染みがあるかどうかを確認する」
冒頭に、「こんなテーマで話をするが、テーマに馴染みのある方は挙手をしてください」との確認をとります。さらに「馴染みのない方は、随所で質問の時間を設けますので、遠慮なく質問してほしい」旨を宣言しておきます。

配慮2「随所で理解の確認をとる」
 随所で、「ここまではよろしいでしょうか」の確認をとるようにします。質問や疑問が出ることは実は、日本の研修やプレゼンでは非常に少ないのが普通です。それでも、こうした確認をとる姿勢は、相手への配慮をしていることのメッセージにもなるので、悪いことではありません。もし、一つでも2つでも質問が出れば、儲けもの?くらいの気楽さでやってみるとよいと思います。

配慮3「解説的なコメントを入れる」
仲間内なので、専門用語はほとんど問題なくわかってもらえます。問題は、事例報告などでは、まったくなじみのない専門用語や業界用語が突然出てくる時です。そんな用語には、脚注あたりで簡単な解説を加える配慮は必要です。

● おわりに
わかりやすさは、伝えたい情報を相手の頭の中にある知識にどれほど簡単に取り込んでもらえるかによって決まってきます。
ここで、「簡単に」の意味は、一つは、情報を処理しやすいこと、もう一つは、相手のすでに持っている知識に関連づけられることです。
指針2「メリハリ表現」は前者を支援するためのもの、指針1「全体—部分の関係」と「相手の知識に配慮を」はともに後者を支援するためのものです。



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2011-04-20 | Weblog
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節操「心を元気にするキーワード

2011-04-20 | ポジティブ心理学
 元気はつらつとは正反対のイメージが、節操にはあります。
 元気はつらつには、心全開、外に向けての自己表現のイメージがあるのに対して、節操には、心閉鎖、内にこもるイメージがあります・
 したがって、心元気のキーワードとしては、節操はふさわしくないようにみえますが、しかし、心を自らの意思でコントロール(抑制)できているという点では、真正の元気へとつながりますので、無視することはできません。
 また、欲求の開放、表現は、日本のような豊かな社会では、よしとされます。また、心の健康という点でも、欲求の抑制は好ましいものとはされていません。
 こういうところだからこそ、節操の大事さが際立ちます。

遅い遅い、頭にくるほど遅い

2011-04-20 | 心の体験的日記
ビスタの立ち上がりのひどさは、前々から
こんどは、XPもどんどん遅くなってきた
末期的
何度、ファイルの整理などをやっても変わらない
もっと根本的な方策があるのだろうが


もいまいち、使い勝手が悪い
もういや
IT秘書がほしい

ワープロがもたらしてくれたこと

2011-04-20 | 心の体験的日記

●ワープロがもたらしてくれたこと
27年前の1978年東芝の森健一氏のグループがはじめて今のワープロの原型になるものを製作して世に出した。筆者36歳の時である。もちろん、当時は100万円以上の高額機器で手が届かない。しかたなく、タブレット入力式のコマスという、少しはワープロ機能が組み込んであった電子タイプライターのようなものを使って、学位論文を執筆した。

ワープロが自分のまわりで一気に普及したのは、それから5年後くらいである。
英文タイプが打てるようになっていたので、ローマ字入力で日本語文章を作成した。これは実に楽しかった。ミスタイプしてもカーソルを戻して打ち直せばよい。段落の入れ替えも、カット&ペーストで一瞬のうちにできてしまう。

なによりうれしいかったのは、原稿をかく前の構想段階。いつもはここであれこれ逡巡したり、あーでもない、そして、あれこれ参考資料をぱらぱらめくりしたりしながら、悩んだりするのだが、これがワープロの画面に思いつきや資料をどんどん打ち込んでいくうちに、自然に構想が形になってくるのである。構想のかなり初期のうちから、進歩感をもって原稿の執筆ができるようになってきたのである。