発想王をめざせ(3) 2-6)
マクロとミクロ 大きく考えて細かくつめる
■頭を柔らかくするポイント
1)ミクロ最適化の罠に要注意
2)マクロを絶えず意識する
3)「中長期の目標」「より上位から」「他 との関係」からも考えてみる
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●正しいことばかりしていたら失敗した
毎日毎日が、その時その場で解決しなければならない問題に満ち溢れている。だからこそ、即断即決が有能さのあかしの一つになる。 ところが、一つ一つの即断即決がその時その場では(ミクロには)正しくとも、後々、あるいは、もっと大きな(マクロな)観点からみると、実は、誤っていた、あるいは、失敗につながってしまったということがある。 「ミクロ最適化、かならずしもマクロ最適化ならず」である。 似たような話しいくらでもある。 ・受験にはいつも成功してきたが、世の中 に 出たら使いものにならなかった。 ・富士山を右に見ながら運転していたら、 突然、左側に見えてきて道に迷ってし まった。
●ミクロとマクロ
人の頭の働きについても、いろいろの形でミクロとマクロは微妙に関係している。 たとえば、左頁上の遊び絵をみてほしい。 ミクロとマクロとがあえて葛藤するように作った遊び絵である。 この例からもわかるように、ミクロとマクロとは、微妙に影響しあっている。あるときは、ミクロが優勢、あるときは、マクロが優勢、あるときは、両者が拮抗することもある。 問題は、普通は、マクロとミクロとが同時に見えることがなく、見えるのは(意識できるのは)ミクロだけなところにある。これが人をミクロ最適化の罠に陥らせることになる。
●ミクロのとらわれから逃れる
有能とみられる人ほど、ミクロ最適化の罠に陥りやすい。なぜなら、有能さがミクロで評価されがちだからである。 無論、それも一つの有能さではあるが、しかし、マクロと整合したミクロの処理こそが有能さの証しでなくではならない。 本物の有能さを発揮するためには、一つには、ミクロの即断即決を、マクロな観点からも吟味してみる習慣をつけることである。ここで、マクロとは、次の3つである。 ・中長期的な目標から 例 今日はだめでも1月後には、--- ・より上位から 例 課より部、部より会社全体 --- ・他との関係から 例 消費者から 作る側から --- もう一つは、マクロをみえる(意識できる) ようしておくことである。 人はみえるものによって動く。ミクロはみえるからこそ人をとらえる。そこで、マクロもみえるような工夫を意図的にする必要がある。全体・部分図はその1例である。 机の前に中長期の目標を掲げておくのもよい。夜寝る前、朝出かけるとき、今日の仕事と同時に、少し先のこと、あるいは、上司や消費者の観点から、日々の仕事の成果を点検・吟味する習慣をつけるとよい。
********本文60行 ****** 図の説明 *********** ■3か2か、円か三角か、大か小か 絵 ○説明 このような絵を使って、大きなほうの(マクロな)文字が何であるかをできるだけ速く口で言わせると、普通に書いたときより、時間がかかる。ミクロがマクロの見えを微妙に妨害しているためである。こうした事態を認知的な葛藤事態と呼ぶ。 案内表示などにこうした葛藤をおこさせる表現をすると、みる人を戸惑わせる。 ■美男か怪人か 写真 ○説明 二枚の写真をこのまま倒立で見ると、少し違和感を持つ程度であるが、雑誌をひっくりかえして見ると、とたんにとんでもない見えが出現する。倒立しているときは、マクロが優勢になるのに、正立させると、ミクロ---目の部分の倒立---が優勢になってきてマクロと拮抗してくるために起こった現象である。ちなみに、美男、美女ほど怪人らしくなるとの説もある。 ■マクロによってミクロの見えが変わる 絵 ○説明 丸で囲まれた文字が横方向に見たときと、縦方向に見たときとで異なって見える。紙で隠してみると、一層そのことがよくわかる。 文脈(マクロ)が強く働いてミクロの見えを規定している例である。文脈がマクロ、つまり「より上位から」「他との関係から」となっている。丸内の文字がミクロを意味している。 ■マクロとミクロとを同時に見せる 絵 ○説明 イラストを使うと、このようにマクロ(全体)とミクロ(部分)とを同時に見せることができる。これによって、部分を見ながら、同時に全体への配慮もできる。案内地図や取扱説明書などでは必須の見せ方である。 これと同じようなことを頭の中でやることで、ミクロへのとらわれから解放され、マクロとのバランスをとることができる。