●心理学とはどういう学問ですか
心理学の目的は、心と行動についての法則を、科学的な方法論に従って見つけ出すことです。 頭だけを使って(思弁で)心を考えるのが哲学であるのに対して、データに基づいて心と行動を考えるのが心理学です。 そのためには、データの集め方、データから法則を引き出す推論の仕方を学ぶ必要があります。ここのところは、物理学や生物学などの自然科学と同じです。 ただ、最近になって科学として心と行動を解明することに加えて、心のケアへの貢献という実践的な課題への社会的な要請が強くなってきています。医学と同じように、基礎と臨床との両方が心理学に求められるようになってきています。
●今、人間の心はどこまで解明されているのですか
アリストテレス(364B.C.-322B.C.)が今生き返って、心理学の概論書を読んでも理解にさほどの困難を感じないであろうと述べた心理学者がいます。つまり、2000余年の間---現代心理学の歴史は100年余の歴史しかありませんが---心の科学が進歩しなかったというわけです。 確かにそういうところもあるのは否定しません。 「古い酒を新しい皮袋に入れる」、つまり、古い問題を新しい観点から捉え直してみる、というようなテーマが営々と研究されてきました。意識の問題や遺伝・環境問題などなどです。このあたりは、新しい皮袋が見つかるたびに、問題がリセットされますので、またあの問題ということになります。 しかし、個別のテーマでは、着実に進歩しています。とりわけ、脳と心の関係については、脳計測の技術の進歩によって、かなりのところまでわかってきました。また、心のついてのさまざまな誤った考え方や偏見を正すのにも貢献してきました。さらに、心のケアにも有効な技術が考案されてきました。 ただ、心は開放系です。限定した領域を設定できないため、研究すればするほどますますわからなくなるようなところがありますし、あらたなテーマが生まれてくるようなところもあります。多分、心理学の研究は、こんな形で永遠に続くのではないでしょうか。
●実験心理学というのがありますが、心理学の研究はどのように行なわれているのですか
心理学の研究方法には大きく分けると、実験法、調査法、観察法があります。実験心理学という名称は、実験法によって心を研究する心理学ということになりますが、伝統的に、感覚知覚や動物生理の領域での研究を意味しています。しかし、この名称もだんだん領域名称に変わってきています。 3つの研究方法に共通しているのは、データです。データの集め方が実験か、調査か、観察かという違いです。 実験法は、実験室で実験者が用意した刺激に対して見えたか見えないかを聞いたりして、その正誤数を測ったりします。調査法は、たくさんの質問を用意して、たくさんの人に答えてもらい、それぞれの項目の選択率などを計算します。観察法は、ある場面で人がどのようにふるまうかをチェックします。 いずれも、集めたデータを解析して仮説が検証できるかどうかを、もっぱら統計的に吟味します。ここのところで、多少、数学的な知識が>要求されますが、実際の計算は、今は、コンピュータがやってくれますので、楽になりました。