「心の外部管理」という言い方は、土足で人の心に入り込むような印象を与えるので、あまり穏当ではないかもしれない。しかし、人の心に配慮した、エラーに強い作業環境の構築の大事さを訴えために、あえて使ってみた。
心理安全工学の趣旨は、メタ認知はいつも十全に機能するわけではないという前提で、事故防止策を考えることである。
メタ認知機能の強化策を考えることも一つの重要な柱であるが、それと同じくらい重要な柱として、メタ認知の働きを外部から支援したり、機能不全を事故につなげない仕掛けを考えることもある。
この2本の柱が、バランスよく実行されている状況では、ヒューマンエラーが起こっても、事故に至る確率は低い。
身近な具体例を挙げてみる。
筆者は、交差点での右折車の指さし確認を実行している。これが、心(注意)の自己管理である。最近あちこちの交差点で見ることができるが、右折車レーンに特殊加工した塗料をはって車が目立つようしてある。これが、心の外部管理である。目立つものには注意が自然に引かれるという注意の特性に配慮した環境設計だからである。