自分がつけた記録をあとから読み返してみると、それまでは自覚していなかった自分の興味や関心、得意分野・不得意分野がわかり、将来設計を思い描くことができるようになります。
たとえば、「会社として取り組むべきこと」や「人事や給料」についての記述が目立つなら、いまの会社で昇進していくほうに関心が向いているといえます。
一方で、「新しいビジネスアイディア」や「給料アップより面白い仕事」という方向性の記述が目立つなら、一プレイヤーであり続けるために転職したり、起業したりする方向性を無意識に模索しているのかもしれません。
このように、仕事日記は、仕事にまつわるあらゆる悩みを解決してくれるのです。
(大見出し)
メタ認知力を高めると、自己管理能力がアップする
(小見出し)
仕事日記で「内省」の習慣を身につけよう
(本文)
ここでは、メタ認知と仕事日記の関係について、もう少し詳しく見ていきましょう。
メタ認知の「メタ」は、ギリシャ語に由来する接頭語で、「あとからついてくる」という意味。メタ認知は、生まれたときから自然に備わっている能力ではなく、幼児期後半ごろから後天的に身につけ始めるといわれています。
ここに、興味深い実験結果があります。
ある実験で、「5312639489」といった数字列を1回聞いただけで、いくつ暗記できるかという簡単な作業をしてもらうことを告げたあと、自分が何個くらい正確に暗記できるかを、あらかじめ予想させました。
その後、実際に記憶実験を行い、覚えられる個数を調べたところ、幼稚園児の場合、自分が覚えられる数の予想は多めで、実際に思い出せたのは4個くらいでした。
それが、年齢が高くなっていくにつれ、自分が暗記できると予測した数と、実際に思い出せた数との一致が高くなっていったのです。
このように「できると予想したこと」と「実際にできたこと」が一致するほど、メタ認知力がついているといえるのです。
ちなみに普通の大人では、記憶できる数はおよそ7個くらい。これは短期記憶(数秒から数十秒前の記憶)の限界を示すもので、「魔法の数7」といわれていますが、それくらいのことは、心理学の知識がなくても大人なら経験的に知っているでしょう。
このように、メタ認知力は、身につけた「知識」や「経験」の量が多い人ほど向上します。
ただし、知識や経験は、忘れたり、記憶が自分に都合のいいように変容してしまったりすることがあります。そうなると、メタ認知が機能しなくなってしまいます。そうしたち式や経験を記録しておくことで、折りにふれ見直していくことができるのも、仕事日記の大きな役割です。
実はもう一つ、メタ認知力を向上させる手立てがあります。
それが「内省」と「反省」です。
●「内省」は自分の心を深く見つめること
●「反省」は過去を振り返り、良くない点を改善しようと考えること
を指します。
先延ばしグセがある、仕事が予定通り進まない、ミスをしやすい、目標を達成できない……。
こうした自己管理のできないタイプは、「内省」や「反省」の習慣が身についていないという共通点があります。
思いつきで仕事をしていることが多く、実際に行った仕事をきちんと振り返らないまま放置しているために、何度でも同じ過ちを繰り返してしまうのです。
反対に、自分で自分を知り、コントロールしていく自己管理能力をきちんと備えている人は、業務に関する知識が豊かなだけでなく、「内省」や「反省」の習慣を身につけています。
つまり、仕事ができる人ほど、頭の中のコビトが自分の能力を正確に見積もり、それに応じた対処法やスケジューリングをするよう指示を出してくれるのです。
仕事日記は、「内省」や「反省」の習慣を身につけるのに、うってつけの方法です。
その日に起こった出来事を思い出し、書きつけていくと、
「なんであんな風に、きつい言い方をしてしまったんだろう」
と自分の心を見つめたり、
「もう1週間早く手をつけていれば、すべてがうまく回ったに違いない」
「あの仕事は、自分には難易度が高かった。○○さんに前もって助言を仰ぐべきだった」
と改善すべきポイントが見つかったりするからです。
1日にわずか数分、仕事日記をつけるだけで、
「待て待て、この前もその失敗したよね」
とツッコミを入れてくれるコビトが現れ、私たちが自己管理不能に陥るのを事前に不正でくれるのです。2014