進歩感「出来つつある感覚を大事にする」
●結果主義とプロセス主義
卒業論文や修士、博士論文だけは、どういうわけか、公開で審査がされます。普通の授業は、指導教員の裁量に任されるのですが、これだけは何人かの教員で審査されるのです。だいたい、指導教員は甘く、まわりは厳しくとなります。そんな中で、できの悪い論文を指導教員が弁護するときの定番言説が、「出来は悪いが、よくがんばった」というものです。
結果よりプロセスが大事というものです。
教育には、確かに、学ぶプロセスで身につくものがごまんとあります。いわば、学べる力です。これが身につけば、たとえ、受験に失敗しても元がとれます。
ここで取り上げる進歩感は、まさに、外からの評価とは無関係に、あなた自身のプロセス主義をささえる心の一つです。
●進歩感ってどんなもの
ここで言う進歩感とは、「だんだんうまくなっているなー」「日々、賢くなっているなー」といった類の感覚です。
「感」ですから、客観的にみて進歩しているか否かはそれほど問題ではありません。そう自分で感じることができればいいのです。
人間誰しも、生れ落ちてからこのかた、日々どこか、何かは変わっています。しかも青年期までは、その変化の大部分は、進歩、つまりより良い方向、大げさに言うなら完態への変化のはずです。
その進歩を実感することは、気持ちいいものです。心元気になれます。
●進歩感で心を元気にするコツ
①進歩感を自覚するものを用意する
進歩しているという実感は、新しいことに挑戦しているときに持つことができます。ここが大事なところです。進歩感は挑戦心とセットになっているのです。
もしあなたが、進歩感の実感がもてないとすると、まずは、そこから改善する必要があります。それほど大げさに気負っての挑戦心は不要ですが、仕事のどこかで、あるいは生活のどこかで挑戦に値する困難なことやもの、難しいことものを見つけることからはじめてみることをすすめます。
一番のおすすめは、趣味の世界ではないかと思います。
②現在進行形で考える
「進歩しつつある」「できつつある」という感覚です。
一日を振りかえって、今日はだめだった、今日はできた、という区切り反省も大事ですが、それが習慣になってしまうと、壁にぶつかったりすると、進歩のための気持ちの持続が途切れてしまうリスクがあります。
そこで、進歩感につなげるためには、今日は明日のためのプロセスである、という考え方をするのです。まだ終わっていない、まだ進行中なのだ、進歩しつつある通過点なのだという自覚ですね。
さらに、それを外から支える仕組みの導入も必要です。それが可視化です。
③進歩を可視化することです
とてえば、ダイエットで体重を量り、記録し、それを見えるように、グラフなどにして眺めるのです。
記録をするという行為が、管理しようとしている行動を意識化することで自己コントロールできます。さらに、可視化によって、その成果を確認できます。人は、見えるものに強く影響を受けます。
④おおまかな下位目標を意識する
学習指導の原理の一つに、細分化の原理があります。
最終目標に到達するまでの道筋を立てる際に、できるだけ細かく下位目標をたたるべし、というものです。そうすれば、無駄なことをせずに目標まっしぐらな学習をさせることができるというわけです。逐次形成法といいます。
これはこれで優等生的な?進歩感を持てることになります。逆に、優等生でない人にはつらい学びのプロセスを歩むことになります。忍耐力、克己心を陶冶するには不可欠なのですが、しばしば、挫折、落ち込み、動機づけ低下となってしまいがちです。
そこで、細分化の原理の逆、目標の大まか化の原理を自分なりに立ててしまうのです。
「おおまか」には2つ。一つは、下位目標が細かくすれば10あるところを半分にする、
もう一つは、成功基準もおおまかにすることです。
一喜一憂せずに、「おおまかに」自己評価するのです。周りからみると我慢がならないところがあるかもしれませんが、時にはそんなものを無視して、マイペースで気持ちるんるんでやるのです。そうすれば、結果が自然についてくるはずです。
このように、大まかに目標を意識することで、今日はだめだった、昨日もだめだった、という逆進歩感に打ちのめされるのに抵抗するのです。全体としては目標に近づいているという感覚を時折、自覚するのです。