天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「聖なる犯罪者」@3作目

2021年01月21日 | 映画感想
「聖なる犯罪者」

ちょっと珍しい…ポーランド映画。第92回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート作品(受賞はしませんでした)
本作は実際にあった事件を元に映画化しているそうですが、この映画のネタと同じような事件は実はポーランドではそれ程珍しい事ではないそうで…(どんなだよw)

あらすじ
少年院に入っているダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)は、前科がある人間は聖職に就けないと知りつつも、神父になりたいと願っていた。無事に仮釈放の身となった彼は田舎の製材所で職を見つけ、たまたま立ち寄った教会で新任の司祭に間違えられる。司祭の代理を命じられたものの、およそ聖職者らしからぬダニエルの態度に、村人たちは困惑するのだった。(Yahoo!Movieから丸パク)

主人公が何の罪で少年院に入っていたのかは分からないけど、少なくともドラッグや小さな窃盗辺りはフツーにこなしている風←ザックリだけど外れてはいないだろうw
そして知らなかったけど前科者は聖職者に就けないんですね。神の前で罪を告白し許しを請えば天国行き確定レベルUPするのがキリスト教なんじゃないんすか?^^;
ま、それ指摘するなら「殺生してはいけない」戒律のハズなのに延々宗教戦争して人殺しまくってるもんねぇ。宗教って本当にご都合主義満載だよなーw

とまあそんなこんなで、主人公のダニエルくんは仮出所して少年院に来ていた司祭から紹介を受けた田舎の製材所に辿り着くんだけど、全然やる気になれなくて村の教会に行くと新任の司祭に間違われて…じゃなくて、敢えて自分が司祭だとうそぶいたら本当に真に受けられてしまって後に引けなくなってしまった、が正解w
そんな訳だから説教するにも告解を受けるにもどういう手順で何を言えばいいのかサッパリ分からない訳ですわ。一応前日ネットで調べまくるんだけど、所詮は付け焼き刃でまるで役に立たない訳で…しゃーないから自分の言葉で自分が思った事をパフォーマンスする。そーすると余りにも型破りで…何故か大ウケする、とw
思い返すとこの手の話ってありますね。無免許医が逮捕されて周囲の人にインタビューすると「本当に患者に親身に寄り添ってくれるいいセンセイでした」とかさ。
人々に説き、赦しを施す側ではなくて自分が思いックソ犯罪者側だからw、赦しを請いたい村人達側の気持ちにより寄り添える事が出来るんだろうなぁと。

そして、この小さな村はしばらく前にある人身事故が元で数人の若者が命を落としていて、それが村中を陰鬱な空気に沈ませているという背景がある。
この事件の真相を明らかにしたいと考えたダニエルは事故の加害者だとされる男(事故により死亡)の妻との接触を試みたり、事故で亡くなった若者達の遺族らに積極的に接触をして魂の救済に乗り出そうとするんだけど、この事件の真相が実は開けてはいけない「パンドラの箱」だった、というのが面白い。
更に面白いのがこの事件には「2つの真相」があって、その1つを被害者側の遺族が持っていて、もう1つの真相を加害者とされる男の妻が握っているという事。
この2つの真相を持ってしても事件は不可解なまま流れていく。これこそ本作の主人公ともリンクする二面性というか多面性というか。

人は誰しも聖職者になれるし、本当の意味で人は誰も聖職者にはなれない。
罪を犯さない人間はいないし、心の何処かで罪を悔い改めない人間もいない。
生まれてから一度もウソを付いた事のない人間はいないし、もし「私はウソを付いたことが一度もありません」という人がいれば、その人は今正にウソを付いている。

本作は結局何処にも着地しないで終わるんだけど、それがまたいい余韻になっていると思う。
人間にははっきり白黒つく答えがある訳ではない。白も黒も併せ持っていて人間なのだ、という事を独特の色彩感で見せてくれる作品。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする