天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「スーパー30 アーナンド先生の教室」@55作目

2022年09月27日 | 映画感想
「スーパー30 アーナンド先生の教室」

世界で絶賛された私塾「スーパー30」を開いたアーナンド・クマール氏の半生を実写映画化。実話ベースのヒューマンドラマ作品を作らせるとインド映画はクオリティが高い。
それにしてもインド映画は上映時間が長い。本作は154分…3時間越えてないからインド映画にしては短めだと思うけど…コレ多分日本公開に合わせて大幅カットしてるよねw

あらすじ
ケンブリッジ大学に送った数学の難問の解法が認められ、イギリス留学の夢をつかみかけていたアーナンド(リティック・ローシャン)。だが、彼の家は貧しかったため渡航費用が出せず、父親も心臓発作で他界してしまう。援助も断られてしまい留学をあきらめたアーナンドだったが、IIT(インド工科大学)進学のための予備校の経営者ラッラン(アーディティヤ・シュリーヴァースタヴァ)に才能を見いだされ、たちまち人気講師になる。(Yahoo!Movieから丸パク)

自分SNSに【「ボリウッド」と聞くと何でもかんでも踊り狂ってる、というイメージを持ってる人未だに結構いるけど、】って書いたんだけどさ(←最近のインド映画はそんななんでもかんでも歌って踊ってるばっかりぢゃねーよちゃんと皆んな観てやってくれよ、という気持ちで)、映画始まったらいきなり踊っててワロタ(滝汗)
まあ、本作は「従来のボリウッド風味」を残しつつもインドのカーストだったり貧困差による教育格差問題等にスポットを当て、それを打開しようと立ち上がり無償で衣食住と教育環境を提供するという驚異の私塾を開いたアーナンド氏の実話を元に映画化したそうだ。

そもそもが貧困層が上位の教育を受けられない(受けられ難い)・親の収入差が教育費に比例している(いわゆる親ガチャ)、というのはインドだけの話ではないですね。全く同じ事が日本でもよくよく話題になると思います。そしてそれはある意味当たり前の事だろうとも思っています。
コレは個人的意見ですが、大体からして親が貧乏→稼げる職業に就けていない、という段階で親自体の偏差値が低い可能性が高い訳です。要するに親のIQが高くない。
そーするとIQの高くない親から生まれた子供もDNA情報的にIQそれ程よろしくない可能性が高い。生まれながらにして「素材」が悪い可能性が高い訳です。逆に金持ちの家というのはその親の偏差値が高く職業も「士業」だったりその偏差値を生かした頭脳労働(=高給取り)に就いているという図式が成り立つ訳です。IQの高い親から生まれれば自ずとそのDNA情報を受け継いだ子供もまたIQが高くなる確率はぐんと上がる。そこへ持って来て親の収入格差がそのまま教育費に反映される訳ですから、金持ちの家の子供の方が「良い素材+恵まれた教育環境」という教育インフレスパイラルに乗っかっていい大学に進学出来る可能性が貧困層よりもうんとうんと高くなるのは当たり前な訳で。
ま、インドの場合日本と違い「カースト」という絶対的な環境差があるので、↑この例えには必ずしも当てはまらないのでしょう。だからこその本作のネタなんだしね。

という訳で、本作も貧しい家庭生まれながら勉強大好き!そして実際頭がずば抜けて良かったアーナンド青年がケンブリッジ大学へ論文を送り、それが認められて入学許可まで貰えたものの渡航費+学費を捻出する事が出来ずに進学を諦める→腐りかかったトコロ、金持ち相手に大学進学予備校を経営していた男(地元の数学大会?で一緒に戦った相手)に声を掛けられて塾講師になり、あっちゅー間にカリスマ講師に登り詰めて大金を手にしてウッハウハ人生大逆転を果たす、というのが前半。
それである日貧しいながらも必死に勉強している青年を見掛けて声を掛け、かつての自分の姿と重ね合わせた主人公が「そうだ!俺の手で貧乏で教育もロクに受けられない環境だけどそれでも勉強をしたいという熱意のある地頭のいい子供達を集めて無償で生活と勉強の場を提供して大学進学までサポートしてやるんだ!」と思い付いて実際に私塾を開校するものの、タダで勉強教えられてたら大金取って塾経営してる奴らにとっちゃー邪魔で仕方ないから次々と妨害に遭って、それでも私塾をやり続けるんだ~みたいな、まあありがちなドラマが展開していくのが後半。

事実なんだろうけど、でもぷち違和感はある。
そもそも腐ってた自分を親孝行出来るレベルまで稼げるようにしてくれたのは成金予備校を経営してたかつての友人?ライバル?な訳で。彼が声を掛けてくれなかったら今のアーナンドは絶対に存在し得ない訳ですよね。それなのにあからさまなヒール扱いされていてめっちゃモヤりますわな。
大体からして生徒から一銭も金取ってないんだから私塾の経営じゃーないんですよね。ただのボランティアなんですよね。だったら先ずは運営資金の為の募金集めるとかパトロン見つけるとかそっちの方が先だろうよと思う訳ですよ。…と思って映画の公式サイト調べたら、そもそもはアーナンド自身が塾を始めて、その儲けがそのままスーパー30の運転資金になっているんだそうだ。なぁーんだだったら裏切られた可哀想なヒールは存在しないという事ね?^^;

ただね、劇中のアーナンドの教育方法は面白いなーと思った。
例え貧しくて教科書が手に入らなかったとしても、生きていて目にするモノ、事象、全てが謎解きと問題になる。問題を自分で考えて、そしてそれを解く。机の上だけで問題を解くのではなく頭の中で考えて想像を巡らせていく、という教育方針は素晴らしいと思った。
実際、自分学生時代数学が苦手でねー…サインコサインタンジェントだのインテグラルだの、それ知ったからって社会に出て何か役に立つんかい!毎日飯作るのに三角関数必要か?位にしか思ってなかったし、実際学生時代は「数学の試験の為に覚えて勉強して問題が解けるようになった」というだけの事で、学校を卒業してからそれを実際に生活の中で役立たせた事はなかったと思うし、数学を学ばなくなった(学校を卒業した)途端に全部ずっぽり頭の中から数式も消えて行ったわね^^;
でも本作のアーナンドの教育方法は「数式が実際の生活の中でどう役立っているのか」を実地で学ばせていた。いわゆる「受験対策としての詰め込み教育」ではなく「生きた知識」として子供達が自然に物事を考える中で数式を使えるように指導していた。コレは本当に素晴らしいと思いましたね。
その教育方法が間違いではなかった、というのを観客に見せていたのが後半のギャング団との攻防のシーンでしょう。全てを子供達が工夫して計算して戦う、名シーンでした。

ちょいちょい挟まれる歌と踊りのシーンがドラマに緩急着いていい感じなのか話の流れがぶった切られてモヤるのかは人それぞれの皮膚感覚だと思いますが(苦笑)、英語を人前で話すのに躊躇する生徒達に度胸を付ける為にお祭りの会場に行って英語劇をさせるシーンは個人的に結構盛り上がりましたね。あんなコール&レスポンスが実際に起こるのかは謎ですが「インド人だったらこれくらい乗って来てくれそう♪」くらいの生ぬるい気持ちで楽しめる絵ヅラ的にもいいシーンだったと思います。

まー言うてもね、実際にこの私塾からは毎年かなりの確立でIIT(インド工科大学・めっちゃ偏差値激高!)の合格者を出しているそうですので…やっぱ地頭の善し悪し大切です。
そして貧乏ながらもその子供の地頭の良さを見出すアーナンド先生の千里眼が一番凄いんだと思いますよ。ただアーナンド先生に学ばせれば皆んなIITに受かる訳じゃないからね!素地があってからの話なんだから…やっぱ、親から受け継ぐDNA情報って大切なんですよー、と話は元に戻るというね(あはは)
コメント (2)
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