「ロストケア」
葉真中顕氏著の同名タイトル小説(日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作)を実写映画化。原作小説未読です。
42人の老人を殺害した介護士・斯波宗典をマツケンこと松山ケンイチさんが、斯波を断罪する検事・大友秀美を長澤まさみさんが演じています。
あらすじ
ある民家で老人と介護士の死体が発見され、死亡した介護士と同じ訪問介護センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)が捜査線上に浮かぶ。彼は献身的な介護士として利用者家族からの評判も良かったが、検事の大友秀美(長澤まさみ)は斯波が勤める施設で老人の死亡率が異様に高いことに気付く。そこで何が起きているのか、真相を明らかにすべく奔走する彼女に、斯波は老人たちを殺したのではなく救ったのだと主張する。彼の言説を前に、大友は動揺する。(Yahoo!Movieから丸パク)
コレはね…もう観ていて心がヒリヒリすると言うか…「答えのない問題」を扱っているんですよね。
劇中でも斯波が検事の大友に向かって「アナタは安全地帯にいるから分からないんです」って言い切るシーンがありますが、介護問題って正にそれで「(金を)持つ者と持たざる者」で天国と地獄なんですよね…こんなネタ、介護問題と全く関わりの無い正しく「安全地帯にいる若年層・富裕層」には親身に考えられない問題だろうと思います。
かく言う自分も、旦那の親(姑)が認知症で数年前から認知症専門の介護施設に入っているけれど…有難い事に旦那の実家はかなりの資産家で姑の介護にいくらでも金つっ込めるので、姑が入っている施設は正に本作の大友の母親が入居している施設と瓜二つで…冗談抜きで「え、このシーン姑が入居してる施設で撮影したんか?」と苦笑レベルだった。
でも世の中誰もが親(配偶者)の介護に金注ぎ込める訳じゃない。それこそ国民年金しか払っていない自営業の人は国が言う「老後1人2000万円」問題待ったなしだろうし、実際毎年老老介護に疲れて妻や夫を殺害したというニュース、介護と貧困に出口を見失って親を殺害してしまった(本作の斯波も)ニュースが後を絶たないし、自分の友人にも介護職に就いている人が何人か居て色々な話を聞く機会があるけど、まあ何というか…やっぱり世の中【地獄の沙汰も金次第】なんだな、と言わざるを得ない。
本作では「(金を)持つ者・大友」×「(金を)持たざる者・斯波」の両方の立場からアプローチしていましたが、決して金を持っているからといって親の介護に対して何もかも満足出来る結果が得られる訳ではない、というエピソードも用意されていましたが(大友の父親との一件)…まあ、だからと言って斯波の立場にはやっぱ立てないよな(苦笑)
本作はとにかく役者の質が高くて…マツケンの演技には何度も鳥肌が立ったわ。この人今年の日本アカデミー賞最優秀主演男優賞にして下さいマジで。
それから斯波と相対する検事・大友を演じた長澤まさみさんの演技も素晴らしかった。斯波の言葉の刃に翻弄され、抗い、そして飲み込まれながらも自分の職務を全うし、事件と自分の実状を重ねてもがき苦しみ、最後に斯波のトコロに語りに行くシーンはまるでカトリック信者が教会に告解に訪れている姿のように写りました。
そして…斯波の父親を演じた柄本明さんが…アンタ上手過ぎてズルいわ!あんなん泣くわマジで!
この手の問題の解決策として「国の施策が悪い」とか「国が保護・保障しろ」とか言う人多いですよね。
でもそれって「日本を共産化しろ」とほぼほぼイコールなんですよ。と言うか今の日本って緩やかな共産主義ですよね。何か新しい施策が発布されると大体「高所得者層、単身のサラリーマン層、子供の居ないサラリーマン世帯層に負担増」ばかりで、だったら働かないで国から生活保護受けてるヤツらが勝ち組ぢゃん!みたいな。
どうして高所得者層からむしり取ればいい、という発想になるのか?高所得者は何故高所得者になったのか低所得者は考えた事があるのかな?と思いますよ。低所得者がやらなかった努力を重ねて…もっと言うと、高所得者層というのは歴史上代々受け継がれた「富の遺産」があるから高所得者で有り続けるんですよね(それは数えられる資産だけでなく遺伝子情報的な側面でも)。この話は長くなるのでこれ以上は止めておきますが、「地を這う層」というのは確実に存在し、そしてそれは(資本主義である限り)未来永劫解消されようがない、正に「答えのない問題」であり「解の分かりきった問題」でもあるんだと思います。
なんか、辛気臭い事を書き過ぎましたね💦
まあそんなこんなで色々考えさせられる問題作でした。本作は観る人の「立ち位置」によって感想が違ってくるだろうと思います。
ただ、「誰もが救われるユートピアはない」という事だけはどの立ち位置の人でも分かる。演者の方々がとにかく誰も彼も素晴らしかったですね。
葉真中顕氏著の同名タイトル小説(日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作)を実写映画化。原作小説未読です。
42人の老人を殺害した介護士・斯波宗典をマツケンこと松山ケンイチさんが、斯波を断罪する検事・大友秀美を長澤まさみさんが演じています。
あらすじ
ある民家で老人と介護士の死体が発見され、死亡した介護士と同じ訪問介護センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)が捜査線上に浮かぶ。彼は献身的な介護士として利用者家族からの評判も良かったが、検事の大友秀美(長澤まさみ)は斯波が勤める施設で老人の死亡率が異様に高いことに気付く。そこで何が起きているのか、真相を明らかにすべく奔走する彼女に、斯波は老人たちを殺したのではなく救ったのだと主張する。彼の言説を前に、大友は動揺する。(Yahoo!Movieから丸パク)
コレはね…もう観ていて心がヒリヒリすると言うか…「答えのない問題」を扱っているんですよね。
劇中でも斯波が検事の大友に向かって「アナタは安全地帯にいるから分からないんです」って言い切るシーンがありますが、介護問題って正にそれで「(金を)持つ者と持たざる者」で天国と地獄なんですよね…こんなネタ、介護問題と全く関わりの無い正しく「安全地帯にいる若年層・富裕層」には親身に考えられない問題だろうと思います。
かく言う自分も、旦那の親(姑)が認知症で数年前から認知症専門の介護施設に入っているけれど…有難い事に旦那の実家はかなりの資産家で姑の介護にいくらでも金つっ込めるので、姑が入っている施設は正に本作の大友の母親が入居している施設と瓜二つで…冗談抜きで「え、このシーン姑が入居してる施設で撮影したんか?」と苦笑レベルだった。
でも世の中誰もが親(配偶者)の介護に金注ぎ込める訳じゃない。それこそ国民年金しか払っていない自営業の人は国が言う「老後1人2000万円」問題待ったなしだろうし、実際毎年老老介護に疲れて妻や夫を殺害したというニュース、介護と貧困に出口を見失って親を殺害してしまった(本作の斯波も)ニュースが後を絶たないし、自分の友人にも介護職に就いている人が何人か居て色々な話を聞く機会があるけど、まあ何というか…やっぱり世の中【地獄の沙汰も金次第】なんだな、と言わざるを得ない。
本作では「(金を)持つ者・大友」×「(金を)持たざる者・斯波」の両方の立場からアプローチしていましたが、決して金を持っているからといって親の介護に対して何もかも満足出来る結果が得られる訳ではない、というエピソードも用意されていましたが(大友の父親との一件)…まあ、だからと言って斯波の立場にはやっぱ立てないよな(苦笑)
本作はとにかく役者の質が高くて…マツケンの演技には何度も鳥肌が立ったわ。この人今年の日本アカデミー賞最優秀主演男優賞にして下さいマジで。
それから斯波と相対する検事・大友を演じた長澤まさみさんの演技も素晴らしかった。斯波の言葉の刃に翻弄され、抗い、そして飲み込まれながらも自分の職務を全うし、事件と自分の実状を重ねてもがき苦しみ、最後に斯波のトコロに語りに行くシーンはまるでカトリック信者が教会に告解に訪れている姿のように写りました。
そして…斯波の父親を演じた柄本明さんが…アンタ上手過ぎてズルいわ!あんなん泣くわマジで!
この手の問題の解決策として「国の施策が悪い」とか「国が保護・保障しろ」とか言う人多いですよね。
でもそれって「日本を共産化しろ」とほぼほぼイコールなんですよ。と言うか今の日本って緩やかな共産主義ですよね。何か新しい施策が発布されると大体「高所得者層、単身のサラリーマン層、子供の居ないサラリーマン世帯層に負担増」ばかりで、だったら働かないで国から生活保護受けてるヤツらが勝ち組ぢゃん!みたいな。
どうして高所得者層からむしり取ればいい、という発想になるのか?高所得者は何故高所得者になったのか低所得者は考えた事があるのかな?と思いますよ。低所得者がやらなかった努力を重ねて…もっと言うと、高所得者層というのは歴史上代々受け継がれた「富の遺産」があるから高所得者で有り続けるんですよね(それは数えられる資産だけでなく遺伝子情報的な側面でも)。この話は長くなるのでこれ以上は止めておきますが、「地を這う層」というのは確実に存在し、そしてそれは(資本主義である限り)未来永劫解消されようがない、正に「答えのない問題」であり「解の分かりきった問題」でもあるんだと思います。
なんか、辛気臭い事を書き過ぎましたね💦
まあそんなこんなで色々考えさせられる問題作でした。本作は観る人の「立ち位置」によって感想が違ってくるだろうと思います。
ただ、「誰もが救われるユートピアはない」という事だけはどの立ち位置の人でも分かる。演者の方々がとにかく誰も彼も素晴らしかったですね。