事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「殺しのパレード」Hit Parade ローレンス・ブロック著 二見文庫

2009-06-08 | ミステリ

Hitparade ケラーが今回依頼されたターゲットは、メジャーリーグの野球選手。球場へ足を運んだケラーは、その選手が通算四百本塁打、三千安打の大記録を目前にしていることを知る。仕事を逡巡するケラーがとった行動とは?上記の『ケラーの指名打者』をはじめ、ゴルフ場が隣接する高級住宅地に住む富豪、ケラーと共通の趣味をもつ男、集団訴訟に巻き込まれる金融会社役員など、仕事の手筈が狂いながらも、それぞれの「殺し」に向かい合うケラーの心の揺れを描いた連作短篇集。
(「BOOK」データベースより)

ニューヨークを描いて余人の追随を許さないブロックの、おなじみ殺し屋ケラーがなんと9.11にショックをうけて炊き出しのボランティアをやりますっ!

殺人を生業とする男が、その職業以上にテロに精神的不安を感じるあたり、ブロックがこのシリーズにおいてケラーにニューヨーカーを代表させている手口が透けて見える。ほとんど何も語らないからこそ、みんなが殺し屋ケラーに感情移入できる手法も切れ味をましている。殺人で得た報酬を彼が何に費やしているかを考えれば、誰もがケラーを愛さずにはいられない。不安の象徴ですよね。あ、誤解されそうだけどちびっこハウスに献金するとかそういうことじゃないですから。

あいかわらずみごとな筆致で、ケラーとドット(元締めのおばさんです)のかけ合いも楽しいが、どうやらブロックはシリーズの幕引きも視野にいれているようだ。さみしい。さみしいぞ

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港座通信~犬神家の一族

2009-06-08 | 港座

Inugami02 「汚名」特集はこちら

犬神家の一族」(1976 角川春樹事務所=東宝)
原作:横溝正史 監督:市川崑 出演:石坂浩二 高峰三枝子 あおい輝彦 島田陽子 三国連太郎

爆発的なヒットとなった市川~石坂金田一耕助シリーズ第一弾。というより、角川書店の社長だった角川春樹という異端児が映画界に殴りこみをかけた作品として知られています。実は「八つ墓村」の企画を松竹に持ちかけたのが先だったのに、いつまでも実現しないことに業を煮やした春樹が東宝と手を組み、メディアミックスを駆使して大宣伝。結果として初日の動員記録をつくるまでになりました。

しかしそんな背景がありつつも、市川は端正な画面づくりに成功していて、日本映画の王道を歩んだ作品になっています。2006年のリメイク版で深田恭子が可愛かったように、旅館の仲居を演じた坂口良子がちょっと驚くほどの好演をみせています。

※湖から飛び出す二本の足(まあ、普通はありえない構図)、屋根の上から見下ろす死体、そして菊人形……派手派手な画面の連続。とどめは佐清のゴムマスクだ。

でもそれ以上に、旅館の内部とか、とぼとぼを歩く金田一耕助のたたずまいとか、地味ぃなところに気を使ってある。わたしは傑作だと思う。

港座オフィシャルブログはこちら↓

http://minatoza.exblog.jp/

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