ネット社会、クローン技術、臓器移植、生殖医療…現実に進行しているテクノロジーの諸問題。星新一のショートショートには、それらを予言するようなことが描き出されていた。ユートピアか、それとも悪夢なのか―。ひとと科学の関係を問い続ける著者が、星新一作品を読み解き、立ち止まって考える、科学と僕らのこれから。星新一の思想を知り人類の未来への想いを伝えるエッセイ。
(「BOOK」データベースより)
星新一のショートショートからインスパイアされる現代科学への懐疑。星自身に関するルポルタージュよりもこちらの連載(サンデー毎日)の方が早かったんだね。遺伝子がらみのツッコミは特に鋭い。そこまでして人間は生きのびなければならないのか……醜悪、と断ずる最相に一票。
にしても、彼女の現代に対する憎悪に近い筆致にはちょっとたじろぐ。醜悪さを含めた喜劇的な存在こそが人間だと星新一はとらえていたのではなかったか。憎むに値しないのが人間だと……。