PART3はこちら。
ベイツ・モーテルのフロントには誰もいない。モーテルの裏側には不気味な一軒家が建っており、二階の窓に女性の影が見える。マリオンはクルマに戻り、クラクションを鳴らす。すると、館から背の高い青年が出てきてフロントに立つ。
「部屋はあいていますか?」
「ええ。12部屋ありますが、12部屋あいています」
気弱そうな、好青年。
「どうもありがとう、ベイツさん」
「ノーマンです。ノーマン・ベイツ。」
都会派のスマートボーイ、アンソニー・パーキンスをキャスティングしたのも妙味。美しいジャネット・リーを見つめて、彼は部屋の選択に少し迷い、結局はこう告げる。
「1号室をお取りしましょう。事務室のすぐ隣なんです」
L字型に折れ曲がって長いベイツ・モーテルと、ゴシック調の館の対比がすばらしい。わたしが同じ日に見た「幕末太陽傳」でも、相模屋という女郎屋の造形がみごとで、階段を上り下りするフランキー堺の躍動をうまく伝えていた。「サイコ」でも、ある人物がモーテルと一軒家を行き来する上下動が恐怖を倍加させている。
「夕食をお出ししましょう。よかったらわたしの家の方で食べませんか?たいしたものは出せませんが」
「……ええ、いただくわ」
モーテルで待つマリオンに、館での会話(というより女性の罵声)が聞こえてくる。
「女をこの家に連れてくるだって?!そんな下品なことは許しませんよ。ろうそくでムードを盛り上げるのかい?そして食事のあとは何をするんだい?お前が言えないんならあたしがその女に言ってやるっ!」
かの有名な『ノーマン・ベイツの母』登場。以下次号。