森光子の死は悲しい。彼女こそ日本の芸能史を象徴していたのだし、彼女しか語れないことがたくさんあったはずなのに、もうリアルにその声を聞くことができない。
冷たい言い方になるけれど、各紙、各誌の“予定稿”の出来がためされるいい機会だ。おそらくは、というよりもう「放浪記」「時間ですよ」関係の決まり切った報道がなされているようだけれど、そこからどれだけ芸能への言及がなされるかでレベルが測られることになるだろう。
まさかジャニーズとかでんぐり返りでしか語らないメディアはないだろうけれど……ないだろうと思います。油断できないか。
わたしは東芝日曜劇場で
「こんちわーパンツ屋ですー」
と声をはりあげていたのが忘れられない。なんてタイトルだっけな……こんなときはネットよね。
そうだっ。「天国の父ちゃんこんにちは」だ。これ実話だったのかあ。
このドラマに代表されるように、彼女の一種のあざとさは日本の芸能界を文字どおり代表していた。あざといことに衒いのない人だった。良くも悪しくも。あとは倉本聰の「2丁目3番地」で、微妙な脇を演じていたのが印象に残っている。
偶然けさ読んでいた本にこうある。
「あたしはね、三益愛子にはがんばればなれるかもしれない。でも山田五十鈴には絶対になれない」
頭のいい人だったのだと思う。実はシニカルに芸能界を俯瞰していたのが垣間見えもしたのだった。ミヤコ蝶々のダークさとはちょっと違う、業界人との距離のとり方は彼女ならではだったのではないか。だからこそ、妙にべたついた哀悼のコメントは彼女には似合わない。でも言いそうだなあ和田アキ子とか美川憲一とか。
本当にコメントをきいてみたい久世光彦や杉村春子にはもうすでに天国であいさつしているだろうしなあ。
「こんちわ。がんばって芸能人をやってきましたよ」と。
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