「いやあよかったなー、まさに神風だよな。近ごろ週刊誌売れないし。小保方さまさま。ありがたいありがたい」
「うちは飛ばしましたもんねー『乱倫の研究室』。くーっ、決まってます」
「ま、別に不倫してようが実は研究者としての倫理には関係ないんだけどな」
「にしてもちょっと気になるんですけど」
「なんじゃ」
「きのうの記者会見以来、逆風も吹いてませんか」
「彼女自身が理研とマスコミの被害者じゃないかって騒いでる連中のことか。気にするな気にするな。世間はどうせSTAP細胞が存在するかどうかよりも、生意気なお姉ちゃんを叩いておけばスカッとするんだから」
「いや、ところがですね、最強の弁護士軍団を結成したあたりから雲行きは怪しく……」
「うむ。まあ、あの業界だと泣き寝入りしてチャンチャンだと思っていたのになあ」
「うちに飛び火はしないですよね」
「しないだろう?きのうの記者会見を見たか。生データを開陳すれば一発で解決する話だったのに、できなかったわけだし」
「でも200回もつくったとか」
「わはははは。それ何年かかるんだよって。ほんとは、理研にその細胞が本当に存在するかどうかを検証するべきなのにな」
「へー、編集長けっこう詳しいんですね科学に関して」
「なわけないだろ。こっちとしては“どんな話をしてくれる学者を選ぶか”だけが勝負。」
「で、うちは小保方NOでいくんですよね」
「保険はかけとくんだよ。どうやら理研の検証がまずいって風も吹いてるんだろ?だから双方を批判しとけばうちに損はないって」
「そうすかぁ。いやうちの女房は、持ち上げて落とすマスコミの常套手段よね、とかしゃらくさいこと言うもんですからうるさくて」
「テレビを見ろよ。風向きが読めないもんだから“街角インタビュー”なんて姑息な手段ばっかりだろ?」
「あと割烹着がどうしたとか。よく考えてみると、最初から“冷静に”って言ってた山中さんがいちばんクレバーだったような……」
「バカ、それだと商売になんないだろうが」
「おれも、なんでみんながこんな実は地味なネタに熱中するんだと思ってたんすけど、みんなが熱中すること自体がありがたいんですよね。勉強になりました編集長!」