その80「機龍警察 火宅」はこちら。
たとえば「太陽にほえろ!」的な刑事ドラマなら、セリフなしの音楽だけで処理されそうな聞きこみの場面。この小説はまさにそこにこそ面白さがつまっている。
有能かつ一癖もふた癖もある刑事たちが、それぞれの職業的スキルを全開にして犯人を追う。実は途中で真犯人は想像がつくけれど、捜査の細部がていねいに描かれているものだから(タクシーの領収書でアリバイを確認するなど)、まったく退屈しない。
道警シリーズが活劇に走りすぎたことで生まれたのが「地層捜査」「代官山コールドケース」だと思う。その味わいを衝撃的な事件に当てはめるとこの作品になるわけだ。すばらしい。
その82「警視庁文書捜査官」につづく。