PART3はこちら。
審問の内容は、彼が手がけた麻薬がらみの事件で、ニックは他の刑事とともに金をポケットに入れたのではないかとするものだった。
「養育費もあり、家賃もたいへんだ。どう考えても月に千ドルは赤字だな」
「Suits Man(背広野郎が)」
とニックは毒づく。この、現場の苦労も知らないで何言ってやがるという彼の姿勢が日本でも貫かれる。
チャーリーと2人、イタリアンレストランでランチをとるニック。向こうには剣呑な連中がテーブルについている。日本人の姿も見える。
「マフィアが来てる店で食ってると、審問で不利だな」
と自嘲するニック。そこへ、長身の日本人が子分を引き連れて現れる。佐藤という、アメリカ映画に出てくるにしてはきわめて普通の苗字。松田優作の登場だ。
アメリカ人たちも驚いただろう、三白眼でキレキレのこの俳優が、とにかく魅力的なので。「燃えよ!ドラゴン」で「考えるな、感じろ」(Don’t think,feeeeeel)とかましたブルース・リーの登場を想起させる。それほどの美しさ。ちなみに、「燃えよ~」の原題はEnter The Dragon(ドラゴン登場)でしたよ。
佐藤は無遠慮にある“ブツ”を奪取し、意気揚々と引き上げようとする。そこへテーブルの日本人(もちろんヤクザ)がひと言。
「相変わらずひよっこだな」
ぶち切れる佐藤。レストランは一転して修羅場と化す。この転調はすばらしい。ニックとチャーリーは佐藤を追いかける。ここから、あの食肉市場でのチェイスが始まるのだ。以下次号。