PART5はこちら。
飛行機のなかで、審問がらみのことをチャーリーに向かって愚痴るニック。ほんの少しだけ反応する佐藤(この時点では、ニックは彼のことをセイトーとしか発音できない)。観客は、彼が英語を解することをここで予感する。
松田優作は、その出自(女郎屋の息子、半島の血)もあってか、日本を飛び出したくて、実際にアメリカに一時期滞在していた過去を持つ。だから英語がペラペラなのではないかと考えがちだけれど、実際はブロークンな英語で角川映画「人間の証明」では使いものにならなかったと製作者の角川春樹は語っている。
その「人間の証明」において、彼はある俳優をさしおいて起用されたことを終生気にしていた。その俳優と、彼はこの作品で念願の共演を果たす。絶対に佐藤役をゆずれなかったのにはこんな理由もあったわけだ。
大阪。
噴煙を上げ、過密な都市であることを主張する画面。
飛行機に大阪府警を名乗る男たちが現れ、佐藤を引き継ぐ。
「ここにサインを」
陰鬱な表情の刑事。日本の観客はここで気づく。なにかあると。だって演じているのが内田裕也とガッツ石松なんですから(笑)。堅い表情の彼らと、余裕の優作。
やれやれ、あとはゲイシャと遊ぶだけだとくつろぐニックとチャーリーの前に、もっと貧相なビジネスコートの面々が現れ
「大阪府警ですが」
と告げる。
ダッシュして追いかけるガイジン二人。しかしもう佐藤は消えている。まずいぞこりゃ。以下次号。