事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ノマドランド」Nomadland(2020 サーチライトピクチャーズ)

2021-04-05 | 洋画

2011年、ネバダ州エンパイア(皮肉な名前だ)は、基幹産業である会社が撤退し、住民たちは家どころか町そのものを失う(郵便番号まで抹消される)。夫を亡くしていたファーン(フランシス・マクドーマンド)は家財道具をキャンピングカーに積み込み、定住しない選択を行う……

原作はジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド:漂流する高齢労働者たち」。惚れこんだマクドーマンドが映画化権を得て、将来有望(次作はマーベルものだそうだ)と見込んだ監督クロエ・ジャオを抜擢して作りあげた。登場人物は二名をのぞいてすべて実際の放浪生活者(ノマド)たちだ。

現実とフィクションの微妙なすき間を狙い撃ちしたような作り方。だから名優であるフランシス・マクドーマンドの役名は「ファーン」だし、デヴィッド・ストラザーンはそのままデヴィッド。

大恐慌時代に移動する貧民との違いは、現代の季節労働がAmazonの配送会社だったりすることだ。

「心配しないで。Amazonはお金になるから」

とファーンは家族に電話をかけたりしている。なるほど。

二律背反に思えるだろうが、この映画におけるマクドーマンドの演技は狂気を感じるぐらいの自然さ。

のっけから野外で放尿するし、大きい方もリアルに。ヌード?それどころか……セックス以外の女性の生理をここまで見せつけられるといっそ爽快。夫の遺品であるお皿の描き方など、うまい。

淡々とした描写が続くので前半は退屈かもしれない。しかし高齢者たちがなぜキャンピングカーで放浪するのかが次第に理解され、ラストでグッとくる。アカデミー賞確実。マクドーマンドはまたしても他の俳優たちから尊敬を集めることになるだろう。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする