ほぼ十年に一度、テレビドラマをイノベートする作品が出現する、が持論。
「天下御免」(早坂暁)
「前略おふくろ様」(倉本聰)
「王様のレストラン」(三谷幸喜)
「木更津キャッツアイ」(宮藤官九郎)
……そして2010年代を代表する作品がここに現れた。坂元裕二「大豆田とわ子と三人の元夫」だ。何を今さらと言われそうだけど、リアルタイムでオンエアを見る習慣を失ってしまったので(大河ドラマを除く)、ご容赦願います。
まず、ナレーションが最高なのだ。“その回”に大豆田とわ子に起きることがいきなり明かされる。声も実に味わい深い。
「これ、誰?」
「ほら、伊藤沙莉(いとうさいり)よ」オンエアを見ていた妻はこともなげに。
「それ、誰?」
「……」
ストーリーは周到。最初の夫(松田龍平)二番目の夫(東京03の角田晃広)三番目の夫(岡田将生)と離婚した大豆田とわ子は松たか子。有能な建築家だったとわ子は、心ならずも社長にまつりあげられてしまう。次々に訪れる会社の危機に振り回され、元夫たちの干渉をふりはらい、そして四人目の男(オダギリジョー)が登場し……
ヒロインの名字が大豆田という変わったものなのに対し、元夫たちは田中、佐藤、中村という平凡さ。そして三人ともメガネをかけているという設定が最終回で炸裂。堪能いたしました。コメディエンヌとしての松たか子のすごさ。
「こりゃ、傑作だなあ。十年に一度じゃない?」
「もっとじゃない?!」
妻は再見してなお感銘を受けたようだ。