かつて東野圭吾は、「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」で、最後まで犯人の名を明かさなかった過去がある。おかげで版元の講談社には問い合わせの電話が殺到したとか。
わたしも知人からメモを渡され、犯人がわかるか挑戦を受けた(笑)。今や売り上げ一億冊を超えた国民作家となった東野圭吾が同じことをやったらどうなるだろう……さすがに講談社もそれは勘弁してほしかったのか、同傾向のタイトルではあるけれど、ちゃんと最後には加賀恭一郎によって犯人が明かされます。でも、昔からのファンは「うわーまた始まったかあれが」と身構えたに違いない。わたしは身構えました。
この作品では、加賀恭一郎は捜査一課の刑事としてではなく、休暇中なのでオブザーバーのような形で事件に関わっていく。紹介したのは加賀の父親の看護を担当していた金森登紀子だったというサービスもあり。つまりは探偵としてこの事件に関与している。
“犯人が最初からわかっているはずの無差別連続殺人”だったはずなのに、事件は次第に別の様相を見せ始める。探偵役の加賀が、関係者を殺人の舞台となった別荘地を連れ歩く展開は、まるでツアコンのよう。
作品の最初にその別荘地の地図があり、読者はそれを見返しながら推理することになる。おお、本格じゃないですか。年末のミステリランキング上位進出決定的。週刊文春ではトップかも。東野圭吾はやっぱり面白い。そりゃ、売れるわ。
「祈りの幕が下りる時」で阿部寛での映像化は終わったはずだけど、この作品もぜひ彼で映画化してほしいなあ。で、もしも最後に加賀の解説がなかったら、わたし犯人を見誤ってました(笑)
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