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ひとつ気づきませんか。原作では安寿が姉で厨子王が弟という設定。でも映画では兄と妹ということになっている。これがどう影響するかというと、
「姉の庇護によって脱出に成功する弟」
よりも
「妹の自己犠牲によって命を長らえる兄」
の方が悲劇性が増すと計算したのではないだろうか。それとも、成長した安寿役に香川京子を選んだのが影響しただけかな。
一行はしかし宿をみつけることができない。しかたなく野宿の準備をしているところへ巫女の姿をした老婆があらわれる。演ずるは毛利菊枝。ここが凄いんですよ。
笑みをうかべる彼女は人買いの一味。だから親子を見て「いい獲物だ」と喜悦の表情をうかべる。その笑いが微妙で怖いったら。むしろ母子を別々に舟に拉致する野卑な男たちの方が単純で安心できるくらいだ。俳優になんの指導もせず、満足するまで何度でも演技させた溝口健二の真骨頂がここに。
作品の背景となった時代には、もちろん人権などかけらもなかった。人命が圧倒的に軽く、消耗品あつかいだったことを差し引いても、巫女の邪悪さはきわだっている。
かくて母は佐渡へ、兄妹は丹後に売り払われる。女中は川に落とされて絶命。絶望の時代。しかしほんとうの地獄はそこから待っていた。母は遊女として籠の鳥となり、兄妹は肉体労働者として山椒大夫(進藤英太郎)に搾取されまくり。
そして、十年がたつ。
厨子王は津川雅彦から花柳喜章に交代。ぜんぜん知らない役者だったけれど、新派の人みたいだ。もっさりした感じなので、子役時代の津川とフィットしていないのはご愛敬。
安寿は先ほども紹介したように香川京子。ため息がでるほどの美しさ。こんな美女に機織りをさせておくほど山椒大夫には見る目がなかったわけだ。この作品における香川京子は、長澤まさみをもうワンランク綺麗にした感じ。女優を美しく撮ることでも溝口健二は一流であることを証明している。以下次号。
美しい香川さん(長澤さん云々・・・その通り!)
妹だったのですね? 原作と混同してました.
変更理由も理解しました,有り難うございます.
でも兄が津川さん,母が田中さんとは!驚き!!
このドラマかぶりつきで観てました,可哀相で.
本来不幸だらけの作品は苦手ですが,
これは大河ドラマなどと同様時代劇として
平気だったのかもしれません.
ただ、香川京子は「赤ひげ」の狂女という
とんでもない美しさを誇る役もあったしなー。