アメリカ国民のため謀報活動に身を捧げてきたエドワード・ウィルソン(マット・デイモン)。青年時代、イェール大学でエリートコースを歩んできた彼は軍にスカウトされ、第二次世界大戦中の戦略事務局(OSS)で謀報活動に従事。終戦後、OSSの延長線上に創設されたCIAの一員となり、ソ連との「冷戦」に身を投じる。そしてCIA最大の汚点といわれたピッグス湾事件の失敗の原因を究明する過程で、国を守るか家族を守るかの選択を迫られることに……。
「なぜCIAにはtheがつかないのか、って質問されたよ。GODにtheはつかないでしょう?って答えておいた」
「ヒトラーを支えたのは軍人だと思うか?違うね。公務員だ」
お楽しみな名セリフ満載な映画。
デ・ニーロとは名コンビであるジョー・ペシが、キューバに利権をもつマフィアを演じていてエドワードにこう質問する。
「ユダヤ人には信仰があり、アイルランド人には故郷がある。私たちイタリア人には家族と教会があり、黒人(ニガー)でさえ自分たちの音楽をよりどころにしている。……君たちWASP(White Angro-Saxon Protestant)には何があるんだね?」
マット・デイモンは応える。
「アメリカ合衆国だ。この国だ。あなた方はこの国のビジターにすぎない」
しつこいぐらいに皮肉な展開も仕込んである。大学時代、女装して笑劇に主演するような陽気な男が、キャリアを積むうちに「石でできた男」The man made of stoneと呼ばれるくらい寡黙になる。そんな彼に東側から贈られた呼び名は「Mother」。
イェールにおいて秘密クラブにエドワードはスカウトされる。このクラブはエスタブリッシュメントへのリクルートコース。加入の際に求められるのは全員の前で裸になり、自分の秘密を告白すること。彼の秘密は幼い頃に父親の自殺を隠蔽したことだった。その父親がエドワードに最後に言った言葉も皮肉だ。
「決してウソをつくな。友達を騙したら信用してもらえない。誰もいなくなり、安全ではなくなる。」
最大の皮肉は、この作品のタイトルが意味するところだろうか。
「わたしは、良き羊飼いである。良き羊飼いは羊のために命を捨てる」(新約聖書)
……スパイ映画としても一級品。ホテルの一室の画質の粗い写真から、その所在地を特定していく過程もスリリング。役になりきるために体型まで変える完璧主義(デ・ニーロ・メソッドと呼ばれる)で俳優たちに尊敬されるロバート・デ・ニーロ監督作品だから、彼を敬愛する俳優たちが大挙して出演していて壮観。なかでも、エドワードの片腕になるジョン・タトゥーロが渋い。
どうしてもキイになる台詞が一緒なので似たような展開になっちゃったけど。
メ-ルの方で使ったのと同じ画像がUPされてたのでびっくり。
気になる台詞といい、気が合うわねえ。
メ-ルでもブログでも触れなかったけど、Motherという呼び名、ダンブルドア校長先生が囁く「君と私は同じ趣味のようだ」(これも気になってたのよ)、そして学生時代の女装を関連付けて、エドワ-ドはホモセクシュルだったことを匂わせている、という解説が公式サイトの中のコラム(だったと思う)にあったのよね。
一理あるかも、と思いつつ、女性との濡れ場も何度か出てきたんだから、ホモというよりバイよね。別に大筋に関わる部分じゃないと思うんだけど、映画で意図的に匂わせていたとしたら・・・・「誰も信じられない」状況では同志の男の方がまだ信頼できるってことなのかなあ。戦国武将みたいな感覚かしらね-。
だからこそ、あの黒人女性とのベッドシーンがうまく機能しているんだと思う。
安全な場所が女とのベッドにしかないってのもさみしいが、親父はハニートラップ(美人局)に引っかかっているんだからマジで似たもの親子というか……
そういう見方もあるわけか(笑)確かに。