事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

三國連太郎のことPART6~小津安二郎

2012-10-09 | 芸能ネタ

Ozuimg01 ……PART5はこちら

三國連太郎が老人ホームに入っていることが報じられて、わたしのブログの、そのページへのアクセスがなぜか増えています。察するに「三國連太郎 介護」などで検索した人が多いんでしょう。ホームに入っているのは有馬稲子の方だったんだけど。

さて、彼はあの巨匠についてこう語っている。

・小津安二郎

-三國さんは小津さんの作品に出られたことは……。

三國:ないです。

-でも名声は鳴り響いていましたよね。

三國:小津さんの演出というのは、非常に行儀のいい演出だったですからね。僕たちのように独立プロ系の仕事をする人間とは、どこか肌合いが……。

-違っていた。

三國:ええ、合わなかったんじゃないでしょうか。

-小津さんの作風は端正というか、スクエアですからね。

三國:佐田くんみたいな人が……。

-ああ、佐田啓二のような人が……。

三國:好まれたんじゃないでしょうか。

……役者にアドリブを許さず、そのイントネーションまで完全に管理した小津安二郎と、奔放な三國が合うわけはない。でも、杉村春子のような不確定要素のおかげで小津の作品が豊潤になったことも確かなので、主演とは言わないが渋い脇で起用してくれても面白かったろう。

日本間の畳に近い位置にフィックスされたカメラのなかで、三國連太郎がどのような……あああやっぱり想像できない(笑)

PART7~告白的女優論につづく

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「バイバイ、ブラックバード」 伊坂幸太郎著 双葉社

2012-10-08 | 本と雑誌

4575236950 太宰の未完の新聞小説「グッドバイ」をベースにしている……という情報だけで読むのをためらってしまった。二年ぐらい

別に太宰嫌いというわけでもないけれど、きついコンセプトのもとに書かれた伊坂作品ってどうよ……あああ失敗した。もんのすごく面白かったのである。

平凡な青年が、ある理由のために“バスに連れ去られる”ことになる。そのため、同時進行でつきあっていた五人の女性と別れなければならなくなる。まず、この設定がたいしたもの。

ここまで感情移入しにくい主人公もめずらしいが、伊坂幸太郎のことなので、こいつが何ともいいヤツに思えてくる。

彼の先導役は180センチの身長に180キロの体重を誇る繭美。どう考えてもマツコ・デラックスをモデルにしているんだけど、刊行当時マツコはメジャーになっていたかしら。

暴力的で加虐的なヒロインが、なぜか愛しく思えてくる展開は「モダンタイムス」と同様。“別れなければならない女性たち”を、なぜかほんの少し幸せにふたりがしてしまうストーリーはとてもやさしい。

太宰というよりも、「舞踏会の手帖」現代版といった趣きか。もっと早く読めばよかったー。ドカベンへの言及は爆笑必至です。

バイバイ、ブラックバード バイバイ、ブラックバード
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「ボーン・レガシー」The Bourne Legacy (2012 ユニバーサル)

2012-10-07 | 洋画

Thebournelegacyimg01 冷戦が終わり、無邪気なスパイ映画がつくれないご時世だというのに、名作とはいえはるか昔の「暗殺者」(ロバート・ラドラム)を映画化しようとしたのはいったい誰だったんだろう。しかも主役が気のいいお兄ちゃん風のマット・デイモンで。

「ボーン・アイデンティティー」はしかし傑作だった。んもう大傑作だった。第二作「ボーン・スプレマシー」第三作「ボーン・アルティメイタム」もレベルが下がらず、スパイ映画の概念そのものをひっくり返して見せたのだ。

見栄えよりも実質重視のアクション、身の回りにあるなんの変哲もないものを凶器にかえる小細工……おかげで同じJBであるジェームズ・ボンドも、「カジノ・ロワイヤル」以降、やたらにシリアスにならざるをえなかったぐらい。

で、いろんな事情があったらしいけれどもマット・デイモンは続編の出演を断り、仕方なくスピンオフの形で「ボーン・レガシー」完成。主役は「ハートロッカー」のジェレミー・レナー。監督はシリーズの脚本を担当したトニー・ギルロイ(「フィクサー」の人だ!)。期待しちゃうじゃないですか。

オープニングはおみごと。きらめく水面に男が浮かび上がる……前作のラストからつながってるの!?と思わせて、レナーの訓練の一環だったツイスト。うん、いい感じ。

シリーズの美点を継承しているのは確か。サブミッション中心の格闘、消火器や時計のとんでもない使い方、バイクってあんな乗り方もできるんですね(しかもニケツで)と驚かされるチェイス。でもねえ、はずまないんだよなあ。

おそらく、主人公の強さがクスリによるもので、しかも彼の行動の動機がそのクスリを求めて、なのが弱いんだと思う。応援しようという気になかなかならないのね。

冷徹で周到であるべき組織のトップ(エドワード・ノートン)と、本来は主人公よりもはるかに強いはずの暗殺者が間抜けなのもつらい。

レイチェル・ワイズの美貌がうれしいし、ラストもしゃれているので楽しめるのは確か。おまけにわたしはスパイ映画が大好きなので続編には期待している。それまで、前三作を復習しておきましょう。おっと12月には「スカイフォール」封切りかっ。

Thebournelegacyimg02

コメント (2)
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空白の一日PART3

2012-10-06 | 受験・学校

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YouTube: Don't It Make My Brown Eyes Blues Crystal Gayle

PART2はこちら

税務署がこの空白の一日を問題視したのは

「一日空けただけってのは姑息な手段で、要するに税金逃れしたいだけなのでは?」

もっとはっきり言うと

「世間一般では、一日あけてまた次の雇用を行うなどということは行わないぞ」

ということなのではないか。

税務署がギブアップしたことを、産経はこう伝えている。

税務署側が1日、県教委に通知した異議決定書によると、臨時教員は再任用の際に有給休暇は繰り越されない上、任用満了後、再任用までの期間は県職員としての身分を有していないなどと指摘。「再任用は単純な任用の延長ではなく、実質的にも別の新たな任用と認められる」と、県教委側の主張を全面的に認めた上で、処分の全部を取り消した。

県教委は「当初の主張が認められた」と歓迎の意向を示した。4税務署を管轄する大阪国税局は「個別の事案なのでコメントできない」としている。

……税務署側が悔しくて歯ぎしりしている姿が目に浮かぶ。結果的に兵庫県教委と税務署の公務員バトルは県教委の圧勝。しかし、どうして税務署はこうも簡単に白旗を上げたのだろう。

ひとつには、やはり税法上どうしても給与所得に読みかえることはむずかしかったのかもしれない。その可能性はある。

あるいは、まさかこれだけ全国で数多くの“異常なこと”が行われているとは思わなかったか。兵庫県特有の事例だと考えたのかもしれない。だから地方の税務署の判断のレベルを超えているとしたか。

いずれにしろ、臨時教員がおかれている立場はやはり不自然なものであり、地公法と税法のどちらかが時代に合っていないのは確か(ま、地公法でしょうけどね)。この問題は、それを浮き彫りにしてくれたのだ。

なにより問題なのは、正規雇用されるためには修行段階が必要だとでもいうような現行のシステムなのは疑いない。臨時雇用それ自体に価値を認めていかなければ、この業界の先行きは暗いのをどれだけ認識しているのか……。

本日の一曲は、クリスタル・ゲイルの「瞳のささやき」Don't It Make My Brown Eyes Blue こういう詞は日本人には書けませんね

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空白の一日PART2

2012-10-04 | 受験・学校

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YouTube: The Rolling Stones - Waiting On A Friend - OFFICIAL PROMO

PART1はこちら

税務署はこう考えたようだ。同一人がわずか一日の空白をおいてまた雇用されるのは、事実上の継続雇用ではないか。とすれば4月に支払われる“退職手当”は、給与の一種であって課税対象になる、と。

現場に臨時教員を迎え入れる事務職員の立場から考えてみよう。彼ら彼女らに空白の一日を設定するのは非常に心苦しい。前にもお伝えしたように

・夏のボーナスが満額出ない

・保険証が手もとにない期間が生じる

・年休が引き継がれない

……からだ。それだけでなく、なぜ空白があるかは要するに“退職給付を高額化させないため”なのだと(少なくともわたしは)判断してきた。更新に更新をかさねると加速度的に退職給付の額は上昇するわけだから。それなのに、このうえ臨時教員たちに不利益になるような判断を税務署がするとは。

さて、このバトルはどうなったかというと……

臨時教員への退職手当、課税を撤回 兵庫の4税務署

「退職」と「任用」を毎年繰り返す臨時教員への退職手当をめぐり、兵庫県の4税務署が県教委に、源泉所得税を納めるよう納税告知処分を行った問題で、4税務署は1日、処分をすべて取り消す異例の決定をした。同様の手当は兵庫のほか東京、愛知、大阪、岡山、福岡など33都府県にあり、県教委の異議に対する初判断が注目されていた。

税務署側は6月、2007~10年度に県教委が臨時教員延べ1530人に支払った退職手当にかかる源泉所得税と、ペナルティーにあたる不納付加算税計1574万3千円を納めるよう告知。県教委は8月15日付で、4税務署に異議を申し立てた。

臨時教員は地方公務員法上、1年を超えて任用できないため、同じ人を継続的に任用する場合、県教委は1日以上の「空白」を置いて再び任用する形を取ってきた。そのたびに月給の6割にあたる平均約15万円の退職手当を払っている。(朝日)

……ひとまずホッ。しかし、今回の騒動で見えてきたものもある。以下次号

本日の一曲はローリング・ストーンズの「友を待つ」。ノンクレジットだけどサックスはソニー・ロリンズ。

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空白の一日。

2012-10-03 | 受験・学校

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YouTube: Dreamtime - Daryl Hall

臨時教員に課税論争 兵庫、再任用前に毎年退職手当
「兵庫県教委は1574万3千円を支払え」

「退職」と「任用」を毎年繰り返す臨時教員への退職手当をめぐり、兵庫県教委と税務署の間で、異例のバトルが起きている。「実質的には継続雇用であり、退職手当とはいえない」とする税務署に対し、「現行の法を順守した結果」と反論する県教委。同様の手当を持つ全国の教育委員会が、行方を見守る。

 臨時教員の源泉所得税を納めていないとして6月下旬、県教委に納税告知書が届いた。県内21税務署中、姫路など4署からで、ペナルティーにあたる不納付加算税約139万円を含む。

(2012年9月23日 朝日新聞)

“同様の手当を持つ全国の教育委員会”は33。だけでなく、全国の臨時教員や学校事務職員もこの問題の行方を見守ってきた。山形県もこの方式をとっているので、もしも課税されるとなったら大騒ぎになるところ。税務署の『指摘』というのはかなり強力で、異議申し立てがすべて認められるのは全体の1%にも満たないとされている(産経による)。

山形県の場合も、常勤講師を欠員補充等で雇用する場合、4月1日から翌年の3月30日まで発令し、空白の一日を設定してまた4月1日から雇用することが多い。ただし、同じ職場に発令されるかは微妙なところで、長くても二年、というのが通り相場だ。退職手当は4月の下旬ごろに支払われているらしい。っていうか、33以外のところって、いったいどうやっているんですか?以下次号

本日の一曲は、ダリル・ホールとデイブ・スチュワートのコラボがひたすらかっこいい「ドリームタイム」

Photo

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「小田嶋隆のコラム道」 小田嶋隆著 ミシマ社

2012-10-02 | 日記・エッセイ・コラム

Odajimatakashiimg01 レジに持っていくと「この出版社の本って、面白いのよねえ」と女将が。ミシマ社ってそんなにメジャーなの?

答は朝日新聞の日曜版でわかった。この会社は書店との直取引をだいじにしていて、だからこそ書店員のファンが多いのだとか。大量生産大量消費大量廃棄の自転車操業でかろうじて生き延びている出版界において、確かに異端の存在だ。

この書でも、小田嶋隆はまさか5年も催促なしに待つとは……と驚き、ミシマに感謝している。ミシマ社、要注目ですね。

さて「コラム道」(藤子不二雄の「まんが道」をいただいているのだと思います)。まさかこれほどストレートな文章読本とは。コラムを書くにおいて小田島がこだわっていることを真正面から綴っている。すごく、参考になります。何を書くかよりもどう書くかの評価が優先するなど、なるほどなあ。

小田嶋隆のコラム道 小田嶋隆のコラム道
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2012-05-21
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今月の名言2012年9月号~カナリア

2012-10-01 | 国際・政治

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YouTube: 王菲Faye Wong - 紅豆Red Bean (MTV)

2012年8月号~「経済的動物」はこちら

9月28日付の朝日新聞は壮観だった。あの村上春樹とあの橋本治が長文の寄稿を行っていたのである。

「それは安酒の酔いに似ている。安酒はほんの数杯で人を酔っ払わせ、頭に血を上らせる。人々の声は大きくなり、その行動は粗暴になる。論理は単純化され、自己反復的になる。しかし賑やかに騒いだあと、夜が明けてみれば、あとに残るのはいやな頭痛だけだ」
(村上春樹)

「『実行力のある強いリーダー』というのが求められているが、上に立ったリーダーが、『私は力がある。私を支持しろ』ということを訴える時代は、たとえその訴えが丁寧であったにしても、もう終わりつつある」
橋本治「『みんな』の時代」

文学者は炭坑のカナリアだと喝破したのはカート・ヴォネガットだったか。危機に誰よりも先に気づき、警告を発するカナリア。同じ日の、同じ新聞にこのふたりの寄稿が載るのは、朝日の戦略もあっただろうが意義深い。遠く離れた他県の土地を購入しようとして、こんな騒ぎの発端となったカナリアもいたわけだが……

「あなたは難しい」

黒澤明が「乱」の主役にと要請したが、高倉健が断ったためにつぶやいた言葉。「あなたへ」の公開を機に、健さんブームがまきおこっている。みんな言わないが、遺作になるのではないかと誰しもが考えているはず。あまりにはまった役柄なので、わたしは(意外なことにわたしの妻も)見ようという気にはならないのだが。
「乱」における老残をさらす役を、彼はやはりやるべきだったと思う。「二百三高地」の、乃木希典役もやるべきだったのだ。ひょっとしたら、それでいまの健さんは成り立たないのかも知れない。でも……

本日の一曲は、ネトウヨにケンカを売る意味でフェイ・ウォンの「アカシアの実」

2012年10月号~「生えました」につづく

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